某月某日某所にて

勝利だギューちゃん

第1話

「もしもし、聞いてます」


私は、とある場所で人に声をかけた。

道を聞くためだ。


この場所はかなりいりくんでいて、とてもわかりにくい。

せめて、近くの喫茶店までと尋ねているのだが、全く返事をしてくれない。


私の声が聞こえてないのかな。


なかなか、スレンダーなすらりとした女性だ。

ただ、肌が白すぎるのもわかる。


「あのう・・・ひょっとして瞳?」

聞き覚えのある男子の声がする。

聞き覚えがするのだが、名前が出てこない。


「俺だよ、塁」

「塁?ごめんよく見えなくて」

「コンタクトはしてないのか?」

「うん。さっき割れた」


私は極度の乱視で、コンタクトをしている。


「眼鏡はないのか?」

「一応あるけど、跡がつくからかけたくない」

「じゃあ、かけてもう一度、その人を見てみてみな」

「やだ」

「いいから見なさい」


しぶしぶ私は眼鏡をかけて、さっきの白い人を見る。


「あっ」

「そういうことだ」


どうりで返事がないわけだ。


「じゃあ、そういうことで」

「あっ、塁待って」

「どうした?」

「近くの駅まで連れてって」

「眼鏡をかけろ」

「やだ。素顔がいい」


こうして私は、塁の腕を組む。


「これは介護みたいなものだからな」

「わかってますよ。塁様」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

某月某日某所にて 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る