第15話 (グレンツェン) 

「それで乗せるのは誰からだ? 殺したい順か、楽しみは最後に取っておくタイプか」

 鬼柳の問いに羽黒は言う。

「どうせなら平等にいきましょうよ。審判台は3つある・・・・じゃないですか?」

「三人同時賭けということか。確かにそれなら弱い『平民』にも使い道があるな」

 鬼柳は3人の駒の合計が強さの出目になると考えた。

「そうなれば向こうも同じように3人出してくる。負ける訳にはいかないですからね。ダラダラと長引くよりはいいでしょう?」

「あら、面白いじゃない。それなら私も一枚噛ませて貰おうかしら」

 鬼柳と羽黒の会話に近見が割り込んでくる。黒いスラックスにカッターシャツという男装が長身の彼女に似合っている。

「何だ、仲間を売るつもりか?」

「シッ、大きな声で言わないでよ。向こうには嘆願おねがいに行くと言ってあるんだから」

「悪い悪い……お前のところもトラブルを抱えてるのか?」

「お決まりの男女関係のもつれってやつよ。まあそれだけじゃないけど」

 近見たちは演劇をやっているグループで、会社員『チーム』の次は演劇『チーム』が審判台に送られる予定だった。

「私をあなたの『チーム』に入れて頂戴。誰だって死にたくないもの」

「愛人の押し売りか。それなら間に合ってるぜ」

「そんなんじゃないわ。私の目は特別・・だから、きっと役に立つわよ」

 そう言って近見は鬼柳に小声で耳打ちした。鬼柳の表情が変わる。

「……そうかよ。だったらそれを証明してみせろ」

「ええ、サインを決めておけばあとは……」

 鬼柳と小声で打ち合わせたあと、近見は演劇『チーム』に戻っていった。


 部長と村市、俵の3人が鬼柳の手下に連れられて審判台に向かう。それを陣地の高台から見ているグレンツェン側の他の面々。

 しかしそこに甲高い銃声が響く。思わず羽黒を見れば、羽黒は頭を撃たれ脳漿をぶちまけていた。

「なん……だと?」

 倒れた羽黒が紫の炎に焼かれていく。鬼柳が対岸のフォルティス側を見れば、そこには陣地を出てライフルを構える若い男と、灰色のスーツの男が立っているのが見える。そして鬼柳たちが見ている前で、若い男は羽黒と同じ紫の炎に包まれていく。

「【相討ち】、だと? 思いついてもなかなかできるもんじゃねえぞ……こん畜生、やってくれるじゃねえか!」

 鬼柳が殺気をみなぎらせてにやりと嗤う。

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