レナとライカ

けけももし

第一話 別れと出会い


「行ってきます」


彼女は少し寂しそうに自分の部屋から足を踏み出した。

これからの旅にとてもワクワクしているようだ。


彼女の名前はレナ、現在17歳、昔で言うJKになるのだろうか、とても若い。

昔からおっちょこちょいな少女で、俗に言う天然ってやつだ、可愛いやつめ・・・



そんなレナだが父親がいた、なぜ過去形だと言うと、

最近その父親が病気で亡くなったからだ。


気の毒だ、だが意外にもレナ自身は、

父親が亡くなって肩の荷が降りたようだ、それはなぜか?


「外の世界は恐ろしい場所だから絶対に行くんじゃない」は父親の口癖だった。

と言っても、レナはもうそろそろ大人だ、

そろそろいろいろなことを知り、いろいろな経験をする必要がある。


父親自身それを分かっていたようで、亡くなる前に

「レナ、言いたいことがある、俺はレナの本当の親ではない、


このライカも実は俺のものでは無いんだ、今まで黙っていて悪かった。


俺は病気でな、この先長くは無いんだ、だからこれから言う事をよく聞いてくれ。


このライカを持って外の世界へ旅をしなさい、


そこでいろいろなことを知り、いろいろな経験をし、


いろいろなものを写真に収めなさい、


そして本当の父親を知りにいきなさい、それが俺ができる最後の頼みだ」


と父親は今までの全てを出し切ったような声で喋った。



「お父さん・・・それでもお父さんはお父さんだよ、


だって私を育ててくれたんだもん・・・ありがとう、


言ってくれて・・・ありがとう・・・お父さん・・・」



レナはとても驚いた様子で泣くのを我慢しているようだった。


その時父親が、レナにそっとに何かを渡した、どうやら古びた写真のようだ。


写真の中には笑顔で赤ちゃんの頃のレナを抱いている人がいた。


「この人がレナの本当の父親だ、

戦争に行ったっきりこのシェルターには戻ってきていない。


今も生きているかはわからないが名前は・・・リョウ・・・って言う人だ、


俺の昔の写真仲間だった、人柄がよくて、よく色々な人を撮影していた、


もしかしたら外の世界に、


リョウに写真を撮ってもらったと言う人がいるかもしれない」


「この人が・・・本当のお父さん・・・」

レナは涙ぐみながら、唾を飲み込んだ。



レナが重い口を開く。

「わかった!お父さん、リョウさんを探しにいく!」

辛そうにしていたレナの心の中で何か決心がついたようだ。


そして父親はこの日を待っていたかのようにレナにライカをそっと差し出した。

「レナ、このライカはリョウが大事に手入れをしていた古いカメラだ、


俺がレナを引き取る時に、リョウが将来レナに渡してくれと頼まれていたんだ、


もしかしたらリョウを探すヒントになるかもしれない」


父親は少し不安そうなだがどこか誇らしげにライカM3を手渡した。


「これがリョウさんのカメラ・・・重い・・・」


レナは幼少期から、父親のカメラを触っており使い方や撮り方は分かっていた。


本当の父親「リョウ」のカメラを受け継いだのは考え深いものがある。


そして、レナはライカを片手に、

外の世界に本当の父親リョウを探す旅をすること事に決めた。


クゥー!!お前ってやつは!!最高に父親やってるな!!

かっこいいぞ!!レナも辛いけど頑張れ!!!

・・・おっと失礼、少し気が昂ったようだ。

ん゛ん゛話に戻ろう、父親との最後の時間はあっとい言うまに経ち、

ついにその時が来た。。。



月日は流れ、父親が亡くなったショックで、ものすごく落ち込んでいたレナ。

物事には手が付かず、部屋に引きこもっていた。


亡き父親のことやリョウのことなど様々な考えが頭の中を、

ぐるぐる、ぐるぐる、と回っていた。


旅のことなどすっかり忘れてしまっていたレナだったが、


そんなある日、父親の部屋から物音が・・・


「え、なに・・・何の音だろう?気味が悪いなぁ・・・」


父親の部屋からなにやらピピピッと音がした

気をつけろよ・・・レナ・・・


レナは恐る恐る音のする部屋の扉からひょこんと部屋をのぞいた。


部屋の真ん中に謎の物体が空中を浮いている。


「うわ・・・何だあれ・・・」

レナは怖がりながらも、興味があるようだ。


その時!その謎の物体がレナの方に振り向いた!


「レナさん初めまして、我の名はARD2259、

自律式誘導ドローンロボットです、お父様にレナさんの守りを頼まれています」


このロボッ・・・ARD2259が急にレナに話しかけたのだ。


(喋った・・・え・・・我??てかなんで私の名前知ってるの・・・)

レナは怖くて口には出せないが心の中で、ものすごく困惑している。


わかる、急に自己紹介されたら困惑するよね。


レナの中で恐怖よりも興味が勝り、勇気を振り絞り話してみることに。


「あの・・・ロボットさん?・・・あなた・・・

てか何で、私の名前知ってるの??」


「お父様にレナさんの情報を

インプットされました、レナさんのことは何でも分かります」

ARDは自慢げに話す。



レナは何もかもの感情が弾けその場に座り込んで、泣いてしまった。



「お父さん・・・私が寂しくないように・・・ありがとう・・・ありがとう・・・」

レナの感情はぐちゃぐちゃになっていた。



ARDが喋り出す。


「お〜いレナ〜!元気出せ〜」


「・・・え・・・」


聞こえた声は、なんと亡き父親の声だった!


「俺は死んでないぞ〜!!ARDの中で元気いっぱいだぞ〜!!

だから泣くな!!元気出せ〜!!」


父親はレナを寂しくさせないように、生前、自分の声をインプットしていた。


「うわぁーん!!うわぁーん!!うわぁー!!・・・・」

レナは生まれてまもない子供のように泣いてしまった。



何ともいい話なのだろうか。。あれ・・・目から水が・・・

おっと失礼、私のことを気にしないで話に集中してくれ。



それから、レナは落ち着いてきたようで、父親が残したARDと話してみることに。



「落ち着きましたか?」

ARDは心配そうに話しかけた。


レナがちょこんと頷く。


「改まして、自己紹介をさせてください、

我の名はARD2259、自律式誘導ドローンロボットです」


「それさっき聞いた・・・」


「あら、ごめんなさい、そうでした。」


「初めまして・・・私の名前はレナ・・・」

レナは掠れた声で言った。


「それはもう知っています、レナさん」


「そうだよね・・・あはは・・・」


ARDは優しい口調で喋り出した。

「私はレナさんの旅をサポートするようにお父様に組み込まれています。」


「そうなの・・・」

レナは少しばかりの笑みを浮かべた。


「君は私のお父さんみたいに優しいね・・・」

レナは自分の父親のことを思い出したのか、微笑んでいた。

「私は幸せものだな〜・・・あはは・・・」



「よろしくねARDさん・・・」


「はい、よろしくお願いします、レナさん」



どうやら仲良くできそうだ。


ま、レナとARDの出会いはこんな感じだ、

色々なことがあったが、うまくやっていく事を願う。


それから、数日経ち、レナとARDはすっかり仲が良くなっていた。

レナ自身気持ちの整理がついたようでそろそろ旅に出るようだ。



「えーと、ここに確か・・・あった!!」

レナは古びた棚から、寝袋やテント、ライトなどを取り出した。

どうやらレナはリュックにパッキングをしているようだ。


「入らねぇ・・・おりゃ!はいれ〜!!」

苦戦しているようだ、がんばれ。


「入った!!やっとだよ〜!って・・・重!!めちゃくちゃ重い!!!」

どうやらパッキングが終わったようでとても重いらしい。


「ライカとフィルム♪フィルム♪」

レナはウキウキだ。


ライカM3に本革のストラップを着けて、ライカを肩にかけた。


期限切れフィルムを伸ばしライカM3に装填して。

巻き上げレバーを巻きシャッターを切った。

準備は万端なようだ。


「さてと、そろそろ行こうかな!」


「はいレナさん、行きましょうか」

遂に出発するみたいだ。



季節は夏、外はとても暑い、と、言っても世界には人がいない、地球が自然の姿に戻っているため、

意外と涼しいみたいだ、羨ましいぜ。



レナは半袖、長ズボン、

トレッキングシューズを履き、緑色の80Lリュックサックを背負って、

完全体のレナである、それにしてもリュックは重そうだ。




・・・「行ってきます」・・・




最後になるかもしれない挨拶をした。

レナは少し寂しそうだが、それ以上に目が輝いていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

レナとライカ けけももし @kekemomoshi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ