夜遊び・デート

那須茄子

第1話

 受験生──そう呼ばれることが、嫌だった。

 

 気付いたら、俺は逃避行のように。


 夜の街を、駆け出していた。


 最初の一歩さえ踏み出してしまえば、なんてことはなかった。案外夜は寒いというだけで、皆がいう『怖いもの』はどこにもいない。


 寧ろ、心地いい。


 あの参考書が積み上げられた部屋より、空気が美味しく感じられる。

 居てもいいかどうかを自問しなくても、広い世界の夜は寛容に受け止めてくれる。


 あの部屋は、息苦しくて狭い。


 このへやは、呼吸が心地よくて広い。

 


 やっぱり、嘘だった。



 誰が夜は危険だって?


 いい加減な教育しやがって。

  

 ....夜は静かで、こんなにも綺麗じゃないか。


 


 


  

 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る