第11話 公国へ
「ふぅ。とんだ一日になっちまったが、無事に公国に戻ってこられたぜ。ビバルデにはしばらく行かねえほうがいいな」
猛獣の
共和国の商業都市であるビバルデで起きたひと
裏家業として
そんな彼らは今、共和国から国境を越えて公国へと足を踏み入れたところだった。
この大陸は西から王国、公国、共和国と続き、さらに東側にはいくつもの小国が乱立している。
陸地の国境線については各国の間で定められているものの、その広大な大地のすべてに壁を張り
実際に国境線を守る
もちろん各国とも巡回警備は行っており、不法入国者は厳しく取り締まるが、その
そんな共和国と公国の国境を
しかしこの
だから
「共和国の連中は金払いがいいからしばらく行けないのは惜しいが、上玉2人を売れば相当な金になる。特に黒髪の坊主は王国に連れていけば高値で売れるだろう。あそこは王家が黒髪の人材を求めているからな。あとは1、2年、公国で
団長はそう言うと、捕らえた姉弟の売り先の候補を頭の中であれこれと考える。
「そういや団長。ビバルデの街にはあのダニアの女王ブリジットが視察に来ていたらしいですよ」
馬車に同乗している受付の男はそう言って顔を曇らせる。
「なに? 本当か?」
「へえ。あの街にもダニアの女たちが常駐するようになるんですかね。連中はお盛んだって話だから、男娼を用意すりゃ
そうぼやく受付の男の話は団長の耳に入っていなかった。
ダニアの女王ブリジット。
その言葉が団長の頭の中で繰り返されており、彼は思考の海に沈んでいたからだった。
そうこうするうちに馬車の前方には
☆☆☆☆☆☆
「おい。着いたぞ。てめえらはここで降りろ」
馬車が停車し、後方から
そんな中、
「弟は無事でしょうね。もし手出しをしていたりしたら、あなたたちの目をこの指でくり抜いてやるから」
そう
2人ともビバルデの街でプリシラに派手に
「チッ。あいつは商品だからな。無事だよ。今はな」
「だが売却されれば貴族の
そう悪態をつく2人にプリシラは怒りを
「そんなことになる前にエミルを助け出して、アタシがあなたたちの全身の骨を粉々に
そう
「おい。弟の方を連れてこい」
するとほどなくして両手両足を
エミルは泣き
だが口元が
「静かにしろ。ガキが」
そう言うと男はエミルの細い首を後ろから手で
「エミルを放しなさい!」
プリシラは必死に身じろぎするが、鉄
プリシラが
「
そう言うと団長は部下に命じてプリシラを荷台に縛りつけている
もちろんプリシラの手
「言うまでもねえが暴れるなよ? 弟が血を流すことになる。殺しはしない。だが多少傷つけるくらいなら商品価値がわずかに下がるくらいだ。そのくらいなら俺はやるぜ」
「くっ……この
プリシラは悔しそうに
「まあ売れるまでの間、水も飯も寝床も与えてやるよ。衰弱されても困るからな。味や寝心地は保証しねえが、そのくらいは我慢してもらおうか」
そう言うと団長はニヤリと笑い、プリシラとエミルを引き連れ、前方に見える夜の街に向かって街道を歩き出すのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます