第26話 しょうがないんだから!

 ……ん?貴族から着信?

「どうした?」

「軍師……仕事の時間よ!」

「…………勤務中だが?」





 ということで、やって来ました!カフェ・雅たれ!

 ……どういう事だってばよ………

「よろしい!時間通りよ。」

「で?何?」

「忙しいなか、申し訳ないわね。」

 ………まぁ…Hが終わらせてくれたんだけどね……

「別に?」

「前回、魔法少女サクラを雇用するかもという話になったでしょ?」

「まぁ、確かに。」

「今日……面接なのよ。」

 マージかー。

「ようするに、手伝えってことか?」

「えぇ、その通りよ。あなた、ニューワールドで面接担当していたしいけるでしょ?」

「あぁ。んーじゃあ条件を決めて……」

「いや、そういうのではなくて。」

「は?じゃあ何?」

「如何にして魔法少女ということを、本人に割らせるかよ。」

「ん?……あー秘密を言えば、言った魔法少女サクラはベニを魔法少女側に引き込む、もしくはそれを利用して信用されるのが目的ってことか?」

 もし、魔法少女側がバレたことに危機感を覚えるならベニが潜入調査出来るかもだし、秘密を聞き、かつ長期間一緒にいればある程度の信頼を勝ち取れる。なかなか良い案では?

「…ふ!もちろん!」

 ……これはそこまで考えてなかった時の顔ですわ。

「まぁ、案を考えるのは良いんだが、露骨にやると怪しまれるぞ?」

「フフフ、それは大丈夫よ。良い考えがあるの。」

 …ふーん。






コンコンコン

「どうぞ。」

「失礼します。」

 制服を着た魔法少女サクラが少し緊張した面持ちで入ってきた。

「座って良いですよ。」

 貴族が手で促す。

「失礼します。」

「まずは、御名前を。」

「渡會桜、高校二年生です。」

 改めて見ると、真面目で優しそうな子だね。

 私はチラリと貴族を見る。貴族はウィンクをして今と告げる。

 ダッル。


「……紅ちゃん!やっぱり私、納得いかない!」

「………咲子ちゃん!まだ、そんなこと言ってるの?本当なら面接だって必要ないのに、咲子ちゃんがどうしてもって言うから!」

 てめ、最初に笑ったな?笑い堪えたせいで変な間が空いてんじゃねぇか!

「え?…あの!」

 魔法少女サクラは困惑しているようだ。無理もないけど。バイトの面接に来たら、面接官が言い争うとかどんなカオスだよ。

「だってあの子、絶対何か隠してるよ!私の第六感がそう告げてるの!」

「…もぉ、ごめんね?桜ちゃん。この子の我が儘に付き合ってくれない?」

 貴族は諦めたように溜め息を吐くと、魔法少女サクラに優しく微笑みながら、尋ねる。

「あ、えっと…大丈夫です。」

 今は彼女の事を憐れに思わずにはいられない。

 バイトの服が気に入ったという理由で決めたバイト先で、もしかしたら自分の正体を疑ってるかもしれない人が同僚なんて。

「じゃあ、あなた!質問していくからしょーじきに!答えなさいよ!」

 …なんで私はツンデレの演技をしなくてはいけないんだ………

「は、はい!」

「その返事は気に入ったわ!

 まず、一つ目。学校以外では基本的に何をしているの?」

「…えぇと、いつもはゲームしたり、読書をしたり?ですかね。」

「ふ~ん?なるほどねぇ?」

 なんか意味ありげに言ってるけど、正直端から見たら咲子ちゃん相当ヤバイやつだよねぇ。だって相手は普通の事しか言ってないんだから。

「じゃあ、次。学校側に聞いたら、たま~~~に授業をサボってるみたいねぇ?そんなあなたに、ここのバイトが勤まるのかしら?」

「う!……それは…………」

 魔法少女は13~20歳までしか力を使えないと言われているが実際は少し違う。13歳から徐々に能力が強くなり19歳で全盛期を向かえ、20歳を過ぎると能力が信じられない程に低下するのだ。だからこそ、20歳を過ぎると前線から消える。魔法少女というわけだ。

 魔法少女を辞めてからも政府からの支援や魔法少女のサポーターとしての仕事もあるため、中卒で魔法少女に専念する人もいたが、20歳で基本的に辞めるとなるのならば、自分のやってみたい仕事に就きたいと思う若人がいる。その中の一人が目の前にいる魔法少女サクラだ。

「ほぅら!何も言い返せないじゃない!紅ちゃん、こんなやつ必要ないよ!」

 俯いたままの魔法少女サクラを私は横目に見る。


「………紅さん、咲子さん。私実は……魔法少女なんです。」

「………は?何言ってんの?そんなの信じるわけ無いじゃん。」

 来ったぁーー!!

「この、ネックレスが証拠です。」

 私はわざと足音を大きくさせて近付く。

 まさかこんなに間近に見れるとは……あぁ、いやいや今は演技に集中だ。

「どーせ作り物でしょ?」

「……咲子ちゃん、信じてあげよ?」

 後ろからひょっこりと顔を出していた貴族が優しく笑いながら、私を説得する。

 クッソ、自分が考えた台本通りに進んでるからってニヤニヤしやがって。

「ハァ?本気で言ってんの?」

「うん。」

 そろそろ、良いかな。

「…………分かった、分かりました!サクラ!」

「は、はい!」

「嘘だったら許さないから。」

 人差し指を魔法少女サクラの顔の前に突き出してから私は部屋から出る。ここからは貴族一人に任せる予定だ。

 ここで上手く行けば、かなり我々が有利になれる。良い仕事したなぁ。

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