甘酸っぱい、幸せ恋物語。中編
梅雨に入って、雨の夕方だった。
少し不穏な感じだったけど、自信を持たなきゃ。
でも、今日、準君にさけられてる感じがするのは気のせいかな。
いつもは気にかけてくれてるのか、授業中に目が合うのに今日は合わない。
(えっ、なんか入ってる―――⁉)
部活に行く前、帰りの用意をしていると、リュックの中に何かが入っていた。
手を伸ばすと、小さな紙きれで、四つ折りにされていた。
中を開くとぶっきらぼうな字でこう書いてあった。
『部活休んで、東公園のベンチに来て 太田』
「……ふぉっ⁉」
思わず変な声が出てしまった。
幸運なことに、周りに人はいなくて、しかも私って声が小さいから聞こえていなさそうだ。
なら、早く休みって言わないと。
部室へ早歩きしていった。
「また休むぅ?」
部活は休みますと言いに行ったら、今日こそはと蒼井先輩につかまってしまった。
怒られるかと思いきや、何やら口がにやけている。
もっと嫌な予感がした。
「夏凜ちゃん、もしかして、恋?恋しちゃって演技できないって?そりゃ困っちゃったねぇ」
「ち、違うんです!」
「先輩、有島さんは最近天童さんと森と一緒になんかしてるみたいなんですよ。それに恋の話はプライバシーの侵害ですよ」
「えぇ――⁉恋バナしたかったのにぃ」
蒼井先輩は、私と同い年で眼鏡女子の奈々に連れていかれた。
奈々の身長は小さめだけど、演技力が部活のトップ争いをしている。
奈々がこっちに向かってグッドマークを作る。
慌てて私は手を合わせて感謝した。
東公園はこじんまりとした、住宅地の中にある公園だ。
元西小の人しか多分知らないから、先輩以外人はいなかった。
先輩はこっちには気が付いてないようで、ブランコに座りながらドリブルをしていた。
そっと近づいていくと、先輩がこちらを振り返った。
「―――久しぶりだな。夏凜」
「お、お久しぶりです……」
よぉ、というような雰囲気を出した先輩が、何を考えているか分からない。
ただ、自分の脈の音が、目に見えるように鮮烈だった。
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