第16話 隠された真実
樹
陸に言われた病院の待合室に行く。
「陸!」
元々ひ弱な顔した陸は更に眉を下げて、泣きそうになっていた。
「…いつき……っ、」
「ひなちゃんは?」
「なんか……お父さんと…お母さんが来て…とりあえず大丈夫だからって…。」
「何が原因だったの…?貧血とか?」
「いや……そんなじゃなくて……急に、ん゙って言い出して胸抑えて倒れ込んで……。そこからはみるみる顔色が悪くなって…意識がなくなっちゃって……っ、」
まぁ大丈夫だ、信じて待とう。なんて、そんなこと言えるような状況じゃないということは分かった。
「……なんか今日に始まった事じゃないみたいなんだ……」
「あの……」
横から、少し年上の女の人が来た。
「あ、お母さん!」
「娘がご迷惑をかけてすみません……」
「いえ!……でも、俺心配で……」
「あの……娘が直接謝罪したいから部屋の方に来て欲しいって言ってまして……」
「……行ってこい、陸。ここで待ってるから。」
「……うん。」
若干雰囲気も相まってか暗がりの待合室から2人が消えていった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
……とは言っても、俺としては気になるもので。
俺の中の善と悪が喧嘩した結果着いてきてしまった。
部屋に近づくと窓が空いていたからなのかよく声が聞こえたため、俺はその辺の壁にもたれ聞き耳を立てた。
「……大丈夫…?」
「うんっ!もう大丈夫!」
「……点滴…」
「あー、、念の為ね笑 」
「……なんか病気があるの…?」
「まぁちょっとしたものだけどね?」
心配しきった陸の声とは正反対な明るい声。
「……心臓、、心臓が悪いの?」
「え、?」
「胸、こうやって押さえてた、痛そうだった……苦しそうだった……」
「あー…いや、」
「教えてよ!隠さないで、」
「……陸くん。」
「なに?」
「……やっぱり付き合えない、考えるって言ったけどやっぱり付き合うのはやめよ?」
「なんで?なんで今その話するの?」
「断るタイミング無さそうだし?笑 やっぱり陸くんは彼氏というか友達って感じで、笑」
「……やっぱりそういうこと?」
「……」
「大きな病気なんだよね。だから、隠すんだよね?だから、」
「……作りたくないの!」
「え?」
「大切なもの……作りたくない……。」
「なんで…?」
「だって……守れなくなった時……辛くなるから……」
「守れなくなった時……って、なに…?」
「……私は生まれつき心臓に大きな病気がある。何度も手術してたくさん傷があって……。たくさんの薬を飲んでるし…年に1度は大きな発作が未だにあって……いつ、そのまま亡くなっちゃうかわかんないの。」
「え……っ」
「……いつ死んでもいいように……しとかなきゃ…笑」
俺は残酷すぎるこの子の人生に天を仰いだ。
テレビではよく見た事があった。悲劇のヒロインが病気でそれでも献身的に支える彼氏が、…王道のストーリーだ。
でも現実はそう甘くない。この子は生まれた時から色んなことを経験してそして、人生をある程度諦めた上での言葉なんだと思う。
俺ならなんと声をかけるだろうか。
そう考えていると、
「……ひなちゃんが守ることは考えなくていい。」
「え?」
「俺が守る。だから、自分の身体のことと人生楽しむことだけを考えてよ。」
……強かった。
あの時のあいつは強かった。
「俺、ひなちゃんのことが好き。もちろん、結婚したいって思ってる。心臓のことなんて関係ない。」
女の子のすすり泣く声が聞こえた。
「まだ学生だし、俺には何も無いけど、この先働いてお父さんもお母さんもひなちゃんも安心させて、そして絶対ひなちゃんと結婚する。」
「だから、何も考えず俺の隣で笑ってて。」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「……なんだよ、あいつ。……ちゃんと応用効かせれんじゃん、笑」
俺はまた待合室にもどった。
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