ch-neko

 僕は友人2人と一緒に夜の山中をドライブしていた。いわゆる肝試しだ。

「なぁ、知ってるか、もうすぐ通るトンネル前にある地蔵の話。」

 友人のけんちゃんがニタニタ笑いながら声を掛ける。

「その地蔵と目が合うと呪われるらしいぜ。」

「そんな訳はないだろ、地蔵は目なんて開けてないんだし。」

 と、もう1人の友人ゆうくんが正論を言う。

「そうだよ、ただの噂話だよ。」

 友人たちとそんな他愛もない会話をしていると例のトンネルが見えてきた。

 彼のいつもの冗談だと思いつつ、僕は少し身構えてしまった。僕達はお地蔵様に目線を向ける。


         👁 👁


「うわ、ホントに目開いてたなw」

「なんだよ冗談だったのかよ。」

 トンネルを抜け友人達はヒヤヒヤしたようなそれでも噂なんて特に気にしていない様子だった。

 僕はというと心臓がバクバクだった。こういう話にとても弱いのだ。

 その帰り道、事故にあうなんてこともなくそのまま解散した。


 3日後けんちゃんが変死体となって自宅で発見された。

 死因は窒息死だったそうだ。

 警察によると死体は損傷が激しく、何かに潰されたようだったらしい。

 僕は心配になりゆうくんの家を訪れていた。

 チャイムを鳴らすと彼の母親が通してくれた。

「悠介、昨日から部屋に籠もって外に出たがらないのよ。」

 そう言って、彼の部屋に案内してくれた。

 ゆっくりとドアを開ける。

 ゆうくんはベットの上で縮こまっていた。

 昨日から寝ていないのであろう。クマがくっきりと表れ、すっかり憔悴している。

「もう…おしまいだ。迫ってきてる…く、来るなっ!」

 ゆうくんはそんなことを呟いて話しかけても、何も返事をしてくれなかった。

 僕は家を後にした。これ以上何を言っても意味がないように思えたから。


 その3日後、ゆうくんは亡くなった。

 死因も同じだった。

 今日は彼の葬儀に行く。自転車に乗って5キロちょっとの葬儀場へと向かった。

 こんなのおかしい。もしかして本当に呪われてしまったのではないっ、 ドン

 考え事をして電柱にぶつかってしまったのか。僕は何かにぶつかって倒れた。

 体制を立て直して自転車に乗り、進もうとした……

 なんだ、これ。

 目の前に見えない壁がある。どれだけ押しても全く先に進めない。

 結局、葬儀には行けなかった。

 僕は家に帰り疲れてそのまま眠っていた。



 次の日、目を覚ます。

 神社に行ってみよう。そこでなら何かわかるかもしれない。

 急いで準備をし、僕は外に出た。

 昨日の事もある、自転車で行くのはやめよう。歩いて3キロ位の所に神社があったはずだ。僕は足早に目的地へ向かう。

 もう呪いを信じる他なかった。

 10分位歩いただろうか、また見えない壁が僕の行く手を阻んできた。

 そんな、あと少しで着くのに。

 どうしようかと考えていると僕はある恐ろしい可能性に気付いた。

 あれ?この壁昨日よりも範囲が狭まっていないか?

 たしか昨日は5キロ、今日は3キロ、明日は1キロ、1メートル、1センチ、1ミリ……

 なんだかんだ自分は大丈夫だと楽観的に捉えていた。気付いた時にはもう遅かったんだ。僕はこの壁に潰される。



 どのくらい時間が経っただろう。

 もう動きたくない。もし、今手を伸ばして壁に当たったら…

「どんどん迫ってくる……」



 ギリギリギリギリ、プチッ。

 END。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ch-neko @ch-neko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ