クイズ・ドキュメンタリー(改訂版)

柩屋清

1話完結

ーー今月の”と或る外国犯罪史”ーー


連続放火犯が、その被害の同地域にて逮捕されました。

この地域は子供の教育に対し、厳しさをベースにした頑強さで有名な街でした。

また、この街の住人達の何割かは、ダム建設により移住を余儀無くされた歴史を持っていた事もあり周囲には顔見知りの新参者が、多く存在した背景がありました。

しかし、逮捕された男は、この事件の真犯人では、ありません。それは一体、どういう事なのか。答えは次のページに記してあります。ページをめくるまで考えてみて下さい。いや、ページは判ってから捲るようお願い致します。ヒント:彼は、どのみち犯罪者です。



*****



ーー正解は・・

なんと別の街の放火犯だったのです。

別れた婦警に対する当て付けが犯行の動機でした。

婦警は犯人との交際を拒み、別の警官と婚約する決断を選んでいたのです。

被害にあった家屋かおくから、この婚約に関する親族ばかり狙われている事が判明。割と早い段階で、この男に的は絞られていた模様です。ーーでは、一体、誰が犯人なのか・・

警察は、放火現場で撮影されたヤジ馬の写真に着目しました。

犯人は自分の犯した現場に犯行後、必ず戻る習性があるーーという常識を重んじた訳です。

毎回、犯行現場に居た者、即ち、写真に必ず映っている者のみに的を絞りました。

”アイツは居た、コイツは居ない”という、証言はえて含みません。では、集められたヤジ馬の内、何パーセントの人員が嘘を述べていたでしょう?(嘘・発見器:調)



*****



ーー正解はゼロ・パーセント・・

全員が本当の事を云っていたーーと推察されたのです。

ダム建設の煽りから、皆で協力して放火をしたのではーーと警察が睨んだ・今回の調査は”的外れ”と診断されました。

当然、写真に映っていない毎回、見物していた人物もいたかもしれません。

しかし、全ての件数の現場に証言でウラが取れる程、街は小さくなかったのです。

では、未解決で納得がいくのか・・

やはり、視点を変える事で結果を得られるケースは人生、様々な局面で見掛けられます。写真には納まらず、必ず現場に居て、尋問もされず、容疑を掛けられない人物・・

警察は身内を含め、虱潰しらみつぶしに捜索しました。そして、ついに一名ひとりだけ、該当する人物に、到り着きました。

では、考えてみて下さい。

ヒント・普段は公の出版物の仕事を担当。



*****



ーー正解は、カメラマン・・です。

彼は五年続けて記録写真の権威、DN賞を落選。賞内の既定により、もう投稿する権利さえありませんでした。無冠で終わる位なら、それ相当の代償を被写体として頂くーーそれなりな言い分でしたが、意図的に火事を起こしてしまっては自分本位な振舞いであり、被害者の思いなど到底、考えていなかったと推察されます。

監視カメラを増設し、写った放火行為が決定打となり、彼はその即日、逮捕されました。

一説に、幼児期、子供をかわいがらないと、その子供が自分本位になりがちーーと云われます。逆に厳しく育てなければーーと思う指導者が子供が屈折していないか・・こう見極める力を持たないと、かえって厳しく育てるのは難しい手段なのでは・・と考えられる昨今。どちらで接していても”屈折した心”を正常に近づけてやれるかは周囲の人間の見極める力なのかもしれない、そんな事を感じさせる事件だったと、我が誌面はまとめます。


(了)

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