佐藤さんトコの猫がまたもや俺の部屋にやって来る

桃もちみいか(天音葵葉)

「白猫は今夜も俺の腕のなか」前編

 あっ!

 佐藤さんトコの猫がまたもや俺んちにやって来てるな〜。


 気品に溢れたその猫は、同じシェアハウスの美人で大人しい佐藤小梅さんの飼い猫らしいのだ。


 白猫はとっても凛とした風格、気高くすらっとしていて、飼い猫も飼い主と似て美人な見た目だが、やはり猫だから撫でると毛並みは艷やかでもふもふだ。


 どういうわけかほぼ毎日、俺の部屋のドアの前にお行儀よく座っているのだ。


「猫ちゃん、君さ、いくらなんでも俺の部屋に来すぎじゃない?」


 最初にあげた高級鰹節が美味しすぎたのか、それとも俺の部屋のこたつが気に入ったのだろうか。


 白猫が俺を見てくる視線は、明らかに何かを期待しているんだ。


「まあ、入んなよ」

「にゃーん♡」


 佐藤さんトコの白猫ちゃんは、もう毎日やって来るもんだから、俺の部屋もすっかり縄張り、くつろいでいる。


 白猫は自分の定位置であるこたつ布団とソファを確認しお気に入りの段ボール遊びを始めたかと思ったのに、俺がこたつに入り込むやいなや腕とこたつ布団のあいだにするりと入り込んでくる。


「ふう〜、君はあったかいなあ。もふもふだし、撫で心地は最高だね。そういや君の飼い主の佐藤さんは? バイトかな? 忙しそうだよね。このあいだも君を佐藤さんの部屋に連れて行ったら、いなかったよねえ……」


 俺は白猫が返事を返すわけがないのに、話しかけた。


 だめだぁ……、猫をなでなでしてのんびりしてたら、学校の明後日提出の課題があるのに眠くなってきた〜。


 うとうとし始めたのが自分でも分かった。

 もうちょいで本格的に俺は眠ってしまい、またたくまに睡魔にいざなわわれ夢のなかだ。


 すると――、白猫はつぶらな瞳で甘えるようにひと泣きして俺を見上げ、頬を舐めてきた。


「うはあっ、くすぐったい。しっかし君の舌はザラザラしてんな」

「ふにゃーご」


 可愛すぎる魅惑の上目遣いには、メロメロになってしまう。

 

「なぁーん。にゃーん」

「はいはい。お腹減ってるのかな〜?」


 俺がすっくと立ち上がりドアを開け、シェアハウスのキッチンのある共同スペースに向かうと、白猫は佐藤さんの部屋に行ってしまった。


「なんだ。せっかくチャオちゅーちゅとかいうおやつ買って来てやったのに」


 猫ってやっぱりすっごく可愛くってマイペースで、羨ましいほど自分の時間軸で生きてる。


「自分勝手な生き物なのに、ものすごく可愛いよなあ」


 しかも猫は相手にしてると飽きないし、癒やされる。


「今度佐藤さんにあの白猫の名前を聞いてみよう。あと好物も聞いちゃおっかな〜」


 俺は白猫の残した温もりとなでなでした可愛い余韻に浸っていた。


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