某行旅死亡人

Nameless Dead

　20XX年２月23日 官報掲載

　本籍・住所・氏名・年齢不詳の男性、身長１７０センチ～１８０センチ。

　上記の者は、20XX年１月22日午後４時44分、Ｋ県句三戸里（くみとり）市霜越（しもごえ）緑地内の肥溜めの中で一部白骨化した状態で発見された。

　死体検案の結果、堆積した汚物に因る窒息死と判明。

　同肥溜めは現在使用されておらず、鉄条網で封鎖されていたが、これを乗り越えて侵入したと思われる。

　周辺に放置された衣服が当人の物であるか否かは不明。また、同肥溜めに沈んでいたシュノーケルも所持品と断定は出来なかった。

　尚、鉄条網外では一冊のノートが見付かっている。同ノートには何らかのプロットらしき文章が綿密に記されており、太字で『リアリティーを追求するには実際にやってみるしかないんだ！』と締め括られていた。

　身元不明の為、遺体は火葬に付し、遺骨は同市無縁供養塔にて保管中。

　遺体は長期間、同肥溜めに浸かっていたと見られ、その強烈な悪臭は遺骨になっても未だ消え残っている。

　上記の者に心当たりのある方は、速やかに当市保健福祉部生活福祉課までご連絡されたし。臭くて堪らない。