第4話 きゅうりとちくわ

なあさんが

ベランダに降りた。

気付いて俺は

あわてて冷蔵庫の扉を開けた。


「どうした」


雑巾を踏んでなあさんが

俺を見上げた。

お伝えするのも、おっかなびっくり。


「きゅうり」

「きゅうりか」


会社の人が大袋で買ったけど

一本しか使わなかったからって

くれた。

この時期のきゅうりは高いので

うれしいんだけど、

ちょっとしなしな。


「きゅうりって、ねこが飛び上がるやつだよね」


見せない方がいいと思って

冷蔵庫にしまったんだけど。


「あれはこわい」


なあさんは

耳を寝かせた。


「たまに道に落ちてる」


ああ、ある。

ばあちゃんが収穫して家の前の畑から家に入るまでに落としちゃったやつか。


とことこと

部屋に入って流し台を見て、なあさんは

ご機嫌で鳴いた。


「ちくわ好き」


輪切りのちくわ

鍋に入れたらできあがり。


みそを入れて、火を止める。

なあさんのフードボウルを用意して

本日のねこまんま、どうぞ。


「煮えてるよ」


やわらかいきゅうり

いかがですか。


「こわくない」


ちくわが味方してくれて

なあさんは

きゅうりをやっつけた。






……きゅうりのあんかけも、好きです。(雪緒)

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