第2話 じゃがいものすりおろし

なあ、なあ

ベランダから声がする。


黒ねこは

今日もいた。

からすはいない。


タオルを水で洗う。

四つ折りにして窓際に置いて

サッシを開けた。


昨日こたつふとんに砂が付いてて

掃除機を掛けたところだ。

日曜に掃除機掛けたばっかりだったのに

うん?

毎日は掛けない。


「足を拭いて入って」

「ああ、それはすまないことをした」


ふみふみ、ふみふみと


上手にタオルの上で足踏みをする

黒ねこは

きれいな毛並み

張りがある。

若そう。


ことこと、と後ろで鍋が小さく鳴った。

俺は台所に戻り

すりおろし器の受け皿から鍋に具を流し込む。


足元がぬくい。

巻きつくように黒ねこは、

八の字を描く。


「魚の匂いがしない」

「今日はだしのもと」


火が通るのを待ってみそを入れる。

ふつふつしてきてガスを止めた。

黒ねこは

俺より先にこたつに移動して天板に飛び乗った。


ごはんをふたつ

先に運ぶ。

鍋敷きと箸、おたまを入れたまま小鍋でみそ汁の登場ですどいたどいた。


黒ねこは

首を後ろに引いて鍋を覗く。


「どろどろしている」

「じゃがいもだよ」


黒ねこの知っているじゃがいもではないらしい。

ほくほくのじゃがいもも好きだけど

これはこれで。


「ごはんに掛けてください」


きみは

ねこまんまを所望するときだけ

敬語になるんだね。






……じゃがいもの摺り下ろしたものは、人によっては見た目がだめだと言われます。(雪緒)


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