第20片
「お父さん!生きてたんだ」
デイドリームは泣きそうになりながら口を開いた。だが、ブラウンは何も言わずに固まっている。
「どうしたの?お父さん」
「え?なんで……」
2人は言う。デイドリームは何か違和感を感じた。それに、こんなに無口じゃなかった。デイドリームが知っているブラウンはこんな人じゃない。
デイドリームは、ふいにブラウンとのやりとりを思い返していた。
【16年前:デイドリーム6歳】
「デイドリームには今後、運命の人が絶対出来る」
「え?」
ブラウンは6歳のデイドリームに対して意味のわからないことを言った。いくら、掃除中に話題がなかったとはいえ、今のデイドリームにはわからない事だ。
「出会った時はビビッと来なくても、長く一緒にいるうちに絶対打ち解ける」
「そうかなぁ」
デイドリームは意味がわからないから適当に答えた。
「絶対な!」
ブラウンは強く念を押して笑った。デイドリームは微笑み返した。
そんなことを思い返している間、長く沈黙が流れた。すると、ブラウンは口を開いた。
「この家に何か用?」
「「ええ!?」」
ブラウンの口から飛び出した声はなんと、女性の声だった。
「驚いた?」
すると女性は間髪入れずに姿を変えた。デイドリームはその姿にまた驚く。
「え?さっきの!」
「デイくん知ってるの?」
「この前、受験会場にいた人……」
デイドリームは息を飲んだ。デイドリームが追いかけた、あのウサギの耳が生えた女性だったのだ。デイドリームにはこの女性に対していろいろ聞きたいことがある。なぜ受験会場にいたのか。ブラウンや、ウサギに変身出来るのはなぜなのか。(そんなことを聞かせないぞ)とでも言うように女性は間髪いれずに話しはじめた。
「君たちが協力すれば世界を救える」
「「……!?」」
急に飛び出したその言葉に2人は顔を見合わせて目を丸くした。
子狐のウエディング 志喰寝 @sigune_kaito
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