第2代将軍頼家妻妾、若狭局

第5話

初めに。

頼家の正妻は不明です。


若狭局は、父、比企能員と母、ミセヤノ太夫行時の娘の間に生まれた。

父能員は、頼朝の乳母、比企尼の甥だ。

若狭局は源頼家と結婚し、妾となった。

頼家はステキな人だと若狭は信じていたが-

(頼家様ったら、いっつも蹴鞠ばっかり…)

しかもどこか武士らしく無い。

それでも若狭は頼家を愛し、頼家も若狭を愛してくれた。

また、若狭は頼家の両親に憧れていた。

「素敵だなぁ…」


結婚から5年後。

「元気な男の子でございます!」

長男、一幡が生まれた。

「娘よ、でかしたぞ!これでこの子は次期将軍だ…!」

「お父様ったら、まだ決まったわけではありませぬよ?」

「安心してくだされ、能員殿、若狭。私が絶対にこの子を将軍にしますので」

頼家がそう言うと、

「頼もしい事じゃのう、若狭。それでは、引き続き我が娘を頼む」

「はい、義父上殿」

そんな光景を見ていた頼朝とその御台、政子は、何故か不安を感じていた。


平穏な日々が続いて一年後。

頼朝が急死。

「父上が?」

それはつまり、頼家が将軍となる事を意味していた。


しかし、将軍となっても頼家は仕事をちゃんとせず、御家人の意見は分かれてしまった。

比企能員や梶原景時は、頼家の主導が良いと。

北条政子は、まだ若い頼家の独裁に反対。

結局、政子の意見が通された。

それに怒った頼家は、梶原景時に告発させ、殺すつもりだったが-


「梶原景時が殺された、ですって!?」

「何だと!?」

逆に密告され、景時は殺されたのだ。

それも、一族諸共。

前は政子に憧れていたが、今は敵。

「景時の仇を討つためにも、頼家様が政治を行えるようにも、北条を討とう」

しかし。

比企一族もまた、滅ぼされたのだ。

屋敷には炎が付けられていた。

「くっ…」

「ははうえ、どうしましょう…」

まだ幼い一幡が言う。

「…もう死ぬしかないわ、一幡。貴方を守れなくて、ごめんね…」

「ははうえっ…」

こうして、若狭局は焼死した。

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御台様 額田兼続 @Nekofuwa-jarashi

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