第40話 【奏多】決意

デスクを掃除していたら、チャットの通知が来た。


え!?

また、ひなからだ!!


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◯沢崎陽奈


奏多さん、お疲れ様です。

金曜日じゃなくて、今日でもいいですか?

どうしても、話きいてもらいたくて。。。

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嘘でしょ!!??

会いたすぎて早めるって事??


俺はすぐにチャットの返事を書いた。


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◯藤原奏多


ひな!どうした?なんかあった?

今日OK!なんでも聞くよ!

仕事終わったら、コンビニのとこにいて。すぐ行くから!

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諦めかけていた恋の炎が、再び燃え上がった。



仕事が終わり、コンビニへ向かうと、ひなはおどおどした様子で周囲を気にしている。


「ひな!」


「奏多さん!!」


ひなはなぜか泣き出しそうな顔をして、走ってきた。

「ダーツバーの下にも、居酒屋ありましたよね。そこで!!」



「お、、おぅ。」


俺は若干戸惑いながらも、居酒屋へ向かった。




店へ入ると、ひなは珍しくビールを頼んだ。

俺もひなにあわせてビールを頼む。


「ひな、どうした?なんかあった?」


「奏多さん、私、、、、」


ひなは言葉を詰まらせ、涙目になった。


「ちょ、落ち着こう?急いで話さなくてもいいし。」


向かいに座っていた俺は、席を移動して陽奈の横に座り、そっと肩を抱いた。

華奢なひなの肩が、小さく震えている。



「ひな?」


ひなは、堪えきれずに声を上げて泣き始めた。


俺は焦って周囲を見渡した。斜め向かいの席に座っているサラリーマンが、怪訝な顔をしてこちらを見ている。


「ひな、泣きたかったら、どっか個室のある別の店に移動しない?」

俺は慌てて提案した。


ひなは我に帰って泣くのをやめ、鼻をすすりながら話し始めた。


「奏多さん、私、失恋しちゃいました。」


「マジか!!!」



好きな人いたんか。でも、振られた??


頼られて嬉しいような気もするが、ただの友達と思われている気もして、嬉しくない気もする。


「振られたの??」


「彼氏には、まだ振られてはいないんですけど、たぶん今めっちゃキレられてる。。。もう1人は、告られたんですけど、たぶん、今は最低な女って思われてる。。。」



もう1人!??


え、彼氏と、「もう1人」!?!?


どゆこと??



頭がついていかずに無言でいると、ひながグスングスンしながら説明を始めた。

「彼氏ができる少し前に、いい感じだった人がいたんですけど、その人と、彼氏が親友的な感じだったみたいで、、、その人に告られてる時に、彼と鉢合わせして、2人がケンカになって。。。」




「マジでか!!!すげぇー修羅場だなっ!!!!!」



純粋そうなひなが、二股かけて修羅場になってたなんて。ビビりすぎて俺は普通にツッコミを入れてしまった。


「あ、いや、ごめんごめん。びっくりして。とりあえず、大変だったね。」


「はい、、、私が全部悪いんです。。」

そういってひなはまた泣きそうになる。


俺はさりげなくひなの頭をヨシヨシしながら、体を寄せた。

「で、2人からはなんかそのあと連絡きたの?」


「いえ、どっちも何も。。。」




怖ぇえ〜な!それは!!

ツッコミたい気持ちを抑えて、俺は落ち着いた大人の男を演じる。

「もうさ、済んじまったことはしょうがないよ。このまま音沙汰なければ、次の恋をすればいい。」


「でも、ふたりとも、すごいタイプだったんです。。。って、私、最低ですよね。」


うん。。

といいたいところだが、我慢我慢。

「そんな状況じゃもう、無理ゲーだよ。追いかける恋より、追われる恋の方がいいだろ。ひなは可愛いし、世の中に男なんか山ほどいるじゃないか。」



「奏多さん、、、、ありがとうございます。」

ひなの顔に、少しだけ笑顔が戻った。



「元気出せよ。食べたら、上のダーツバーでも行って遊ぼうぜ。2人で。」





「はいっ!」

ひなは赤く腫れた目で元気に返事をした。










‥今、弱っているひなを誘えば、そのままお持ち帰りできるのかもしれない。



そうしたい気持ちは、やまやまだ。



でも俺は、そんな修羅場に巻き込まれるのはごめんだ。

だいたい、二股をかけるようなひなと付き合っても、俺に尽くしてくれることはないだろう。利用されて終わるだけだ。



良き相談相手として、頼れる先輩でいつづけるほうがカッコいい。



でも、目の前で俺に心を許して涙をこぼすひなを見ていると、そんな気持ちに負けて連れ出してしまいたくなる。



なんだか俺まで泣きそうになってきた。





いや、だめだ、追いかける恋は、やめにしよう。





「ちょっとごめん、仕事の連絡で」

ひなにそう告げ、俺は気持ちにけりをつけようと、スマホを手にとった。






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山本さん、こんばんは。藤原です。


忙しいかとは思うんですが、もしよかったら週末、ドライブでも行きませんか?

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