第12話 【幸太】定食屋にて

昼休み。

今日はわりかし仕事が落ち着いていたので、時間通りに休憩に入れた。

久々に、会社の横の定食屋に入った。


「小倉さ〜ん!」

奥の席に座っていた恵が俺を呼んだ。

「めぐか。今日は珍しくひとりなの?」

「秋山が今日は忙しいみたいで。最近、陽奈もよく一瞬に食べてるんですけど、今日は二日酔いであんまり食欲がないみたいで。」

「ひなちゃんも一緒に食べてるんだ。」

「そうなんです。ここ最近は結構。てか、あのあと、どうでした?」

恵がにんまりしながら俺の顔を見た。


「あのあと?」

「陽奈ですよ!ひ・な!!!連絡先、交換したんですか?」

「ああ、したよ」

「陽奈のこと、ぶっちゃけどうなんですか?」

恵は身を乗り出してニヤニヤしている。

こいつは、ほんとに。。。


「どうって別に、何もないよ。絵が好きだっていうから、一緒に描かない?って誘っただけ。」

「なあんだ。つまんないの。小倉さん、年下はありですか?なしですか?」

「ありもなしも、付き合ったことないからなぁ。めぐは、絶対年上だよな。」

「はい、私は年下とか無理なんで!今カレも、2個上ですし!」

「あ、それ初めて聞いた。めぐ、今カレの話あんましないよね。もしかして、社内のやつなの?」

「えっ!!それは、、、ご想像におまかせします」


もはやイエスと言っているようなものじゃないか。

まあ、めぐは、ちと性格悪いけど、人懐っこいから社内でも人気がある。誰かと付き合っていても、何の不思議もない。


「そういえば、奏多さん二日酔いで吐いて大変みたいですよ。チャットでランチ誘っても返事ないからLINEしたら、お休みだって。」

「奏多?あぁ、なんか昨日バーベキューの時もだいぶ酔っ払ってたよな。山本さんに猛アタックしてたらしいし。」

「でも、奏多さんは山本さんのこと別にタイプじゃないはずです。なんかヤケクソになってるのかなーって。」

「そーなんだ。めぐは本当、社内のこと知り尽くしてるよな。」

「なんでも知ってますよ!小倉さんが、美波さんと付き合ってたこともね〜」

「でた!情報通。もうその話は勘弁してくれよ。」

俯く俺を見て、恵は楽しそうに笑った。



会計を済ませ、ビルに戻った。

朝から陽奈とチャットをしていたが、まだ今日は顔を見ていない。

めぐのあの様子からしても、陽奈は脈アリなのかもしれない。

なんだか無性に陽奈の顔が見たくなった。


「石黒、午後の部長会で使うパンフレットのサンプルってもう配布済んだ?」

「すみません、まだです!すぐやります」

「あ、俺持ってくからいいよ。」

「え、いいんですか!すみません、ありがとうございます!」


パンフレットを片手に、俺は8階へ行った。

俺に気づかずにパソコン画面を眺める陽奈の後ろを通り過ぎる。

「神山部長、お疲れ様です。午後の資料です」

「おぉ、小倉くん、珍しいな。ありがとう。」

振り向きざまに陽奈のほうを見ると、ばっちり目が合った。頬を赤らめた上目遣いの陽奈の顔が、たまらなく可愛く見えた。

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