第4話 車がレベル3になったぞ

 それにしても、昨晩は長かった。

 異世界転移して初めての夜。

 怪異なことが連続して起きて、

 頭が混乱したまま、夜に突入したんだ。


 音といえば風の音ぐらい。

 月明かりで多少は明るいけど森の中は真っ暗。

 まさしく、漆黒の闇。

 情けないけど、孤独と不安で泣きたい気分。

 車の後部をベッドにして寝ようとしても、

 マナジリは冴えたまま。


 本とか無いし。

 もう、一晩中音楽聴いてたぞ。

 あ、一晩中っていうか、いつの間にか寝てたけど。



 翌日、さっそく開削を再開した。

 昨日は闇雲に進路をとったんだけど、

 今日からは南に進路を取ることにした。

 太陽が目安になるし、南なら暖かくなるだろうと思って。


 50m進むと、魔素の補填。

 約2時間後に充填完了。

 そんなのを5回程度繰り返す。


 周囲の木が高すぎて遠くを見渡せないけど、

 あんまり地面の高低差がない。

 多分、平野の中の森なんだろう。

 だから、一応まっすぐ走っているつもり。

 ナビにもまっすぐの一本道が表示される。



 すると、日没前に再びゴブリンが襲ってきた。

 30体はいる。

 しかも明らかに体躯の大きなゴブリンもいる。

 やつがリーダーか?


 さっそく攻撃だ。

 照準を自動で合わせて、


「ドンドンドン!」


 結構な音が車内にも鳴り響く。

 冷静に残弾数を数えつつ、何度かリロードをし、 

 

『32体のゴブリンと1体のホブゴブリンを討伐しました』


 ほんと、ゲームそのもので快適。

 やっつけた相手はゴブリンだ。

 やっつけると霧散するしね。

 現実感がない。


 あの大きいやつはホブゴブリンだった。

 リーダーなんだろう。

 外には魔石が散乱している。

 僕は息をとめて急いで回収した。



『魔石が33個投入されました。レベルアップしま

すか?』


「YES!」


 車のレベルが3になったけど、車体は変化しない。

 でも、設備が充実した。


 まず、マ◯クモードが追加されたのだ!

 あれだよ、有名なハンバーガーチェーン。

 車内に専用ボックスが追加され、

 フタにメニューが表示されている。


 ハンバーガー、チーズ、照り焼きチキンの

 基本3種バーガーとポテトフライ。

 それだけなんだけど、これは嬉しい。

 流石にエナジーバーは飽きるもんな。


 さっそく全種類オーダーしてみる。


『お待たせいたしました。フタをあけてお取りください』


 メニュー画面が制服姿の可愛い女の子に切り替わって、

 やっぱり可愛い声でそう返答してくれる。

 癒やされるぞ。

 だって、ここはいろいろと意味不明すぎる。

 一人で放り出されて不安まるけなんだ。

 人のぬくもりが欲しいよ。


 さっそく、食べてみる。

 

「うっま!」


 いや、普通のマ◯クのバーガー。

 でもね、もう後光がさしてるくらい美味しい。

 僕のほんとうの世界とつながってる気がして。


 僕は一時期高級路線の店にハマったことがある。

 でも、ハンバーガーはやっぱりマ◯クだな。


 確かに値段が高い店はずっと美味しい。

 でもマ◯クって、日本でいうとお茶漬けって感じ。


 料理屋さんで食べる高級なお茶漬けじゃなくて、

 家であまりものの冷やご飯にお茶かけるやつ。

 ディスってるわけじゃない。

 食べるとホッとする味。


 ドリンクは冷蔵庫のコーラだ。

 暖かいコーヒーとか欲しいんだけど、文句は言えない。

 それに車のレベルを上げていけば、

 色々な商品が期待できそうだ。



 あっという間に3つを食べてしまった。

 注文は可能だけど、とりあえずはこれでおしまい。

 それにしても、タダなんだよな?


『チャージされたMEで支払いをします』


 車に聞いてみると、そんな答えが。

 MEメーターはいつでも要確認だな。

 ゼロにしちゃうと色々と不都合がおきる。


 そういえば。

 マ◯クは女の子の声で喋ってくれた。

 じゃあ、ダッシュボードは?


『ボイス可能です』


 おお、車に聞いたら喋ってくれるぞ!

 でも、おじさんの声だ。


『切り替え可能です』


 ああ、パソコンボイス、オジサン2種類、

 女性2種類のボイスを選択できる。

 僕は結局オジサンの声にした。

 マ◯クは女性ボイスだから、

 こっちは男性ボイスでバランスをとったんだ。

 だって、色々な声があったほうがいいでしょ?


 ちなみに内容はパネルにも表示されるから、

 文字でも確認できる。



 腹八分目になったお腹をさすりながら、

 他の設備にも目を向ける。


 次は、銃器だ。

 レベル2の銃は外出て確認してみると拳銃だった。

 ベレッタM92に似ている。

 ゲームでおなじみの拳銃だ。


 銃座にはアームで取り付けられている。

 これは取り外しができ、単体で射撃可能。


 取り外して構えてみる。

 結構重くて片手だと腕がブルブル震えてしまう。

 照準は自分で合わせる。

 弾数は14発。


 何発か撃ってみたけど、すぐに手首が痛くなった。

 衝撃がガツンとくるんだ。

 それにちゃんとあたらない。

 けっこう難しい。

 こりゃ、色々鍛えなきゃ使い物にならないな。


 オプションとしては消音器をつけられる。

 ただ、音が大きい。

 映画のような『プシュッ』にはならない。

 真夜中なら近所に響くんじゃないか。


 それから、14発撃ったらそれでおしまい。

 リロードするにはアームに戻す必要がある。

 


 攻撃手段は拳銃だけじゃない。

 レベル3になって短機関銃が追加された。

 短機関銃は拳銃弾を使用した小型機関銃だ。

 追加された銃はH&K MP5に似ている。

 これもゲームでおなじみだ。


 上記ベレッタM92と同じ弾丸を使用。

 普段は銃座のアームに取り付けられているが、

 こちらも取り外し可能。

 装弾数は30発。


 拳銃と短機関銃は選択可能。

 ただ、短機関銃がメインになると思う。

 拳銃よりも短機関銃のほうが射撃し易いのと、

 制圧力が違いすぎる。

 連射速度も違うけど、装弾数の違いも大きい。


 拳銃14発、短機関銃30発を撃ち終わると、

 リロードしなくちゃいけない。

 

 アームにつけている場合は自動だけど、

 ほんの数秒のタイムラグがあるんだよな。

 だからゴブリン程度ならば短機関銃の単発撃ちで

 しばらくしのいでいくつもり。


 あと、残弾数の確認はマストだよな。

 まあ、現状では結界があるから敵の攻撃には対処できるけど。



 車の足回りもかなり強化された。

 エアサスペンションになったんだけど、

 性能が凄い。


 ここは道が凸凹している。

 走れば揺すられまくり。

 歩く速度以上では走れない。


 でも、新サスだと非常に滑らかになった。

 細かい振動は残るんだけど、問題ない程度。

 ちょっと整地の悪いアスファルト道路ぐらい。


 それから、浅瀬(1m程度)なら行けるらしい。

 これも地味に嬉しいかも。

 今後、水場を越える場面が必ず出てくる。

 1mということは腰程度の水深だ。

 ちょっとした川なら渡りきれるだろう。


 その他にも強化された設備が多い。

 開削能力。一気に数百mは開削する。

 結界。範囲は車から3m程度にまで拡大。

 探査範囲。半径50mに拡大。

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