透明人間も魔法みたいな青春がしたい!〜青春狂いの異能学園生活〜

わっしゃ

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(このクソみたいな異能を活かすにはこういうことしかできないんだよな)

小柄で黒髪の少年は日本一異能についての情報が多い”葛城異能学園”に侵入した。

葛城異能学園には数多くの魔術書、異能についての情報、そしてダンジョンから入手したアーティファクトが眠っている。

その中でも少年は異能についての情報、正しくは『魔力暴走』という現象についての情報を盗みに学園に忍び込んだ。


(異能関連で色々と重要な場所だから警備もしっかりしてる。もちろん窃盗はおろか侵入すら難しい…この俺、透明人間モドキの木山賢治以外ならな。)


少年こと賢治はニヤリとした表情をしながら登った正門から飛び降りる。

空中で三回転半した後に某蜘蛛男のポーズで着地した。賢治はこの行動をかっこいいと思っているがもし行動を見ている人間がいたら十中八九「何それ、ダサっ。」と言われるようなものだった。




「こんな深夜に正門から侵入者なんて来るわけなくないか?」

「だよな。こんな暇で退屈な仕事より迷宮探索者の仕事がしてーよ」


門の外から正門を挟むように周りを監視している男二人は仕事についての愚痴を話している。


「ところがどっこい来る時には来るんだよ不審者ってのは。次は気をつけな!」


門の内側から大きな声で煽った。しかし男たちは「今なんか聞こえたか?」「いやいや気のせいじゃね?」と一言二言会を交わしすぐに別の雑談へ移った。


(こんだけデカい声出しても違和感感じるだけとかこの体質は本当に嫌になる。透明人間っていう男の夢くらいメリットとデメリットの比率が壊れててくれ。釣り合いが取れすぎておかしいじゃねーかこの野郎!)


心の中で悪態をつきながら賢治は深夜の葛城異能学園を歩く。

2階の職員室に着いたらあるものを探し出し、手に取った。


(やっぱりこれだよ学校の地図が乗ってるパンフレット。情報に差があるかもしれないから一応数種類盗んだけど必要あったか?まああるだけいいか)


賢治は学校のパンフレット4種類と目立たない場所に落ちていた100円玉を拾い職員室を後にした。


(細かい場所にある100円玉も見逃さないのが本物の盗人よ。まあそんな話は置いといて目的の資料がありそうな場所はどこだ?総合異能研究室、禁書庫辺りが本命。時点で体育館棟のトレーニング室、異能体育準備倉庫か。とりあえず近い順に禁書庫→総合異能研究室→トレーニング室→異能体育準備室の順番で回るか)


賢治は本館の2階から連絡通路を渡り研究室などがあるC棟に向かった。

何事もなく禁書庫についたその時、賢治の体は宙を舞った。


「は?」


辺りを見渡すとそこには銀色の髪を持つ少年がいた。

少年は100円玉を指で弾きながら話し始めた。


「タクシーご苦労さん。いやー幸運だったな、まさか怪盗仲間が現れるとは思ってなかったよ!」


(え?いやいやいやどういうことだよ。タクシー?もしかして転移系の魔法持ちか?でもそんな魔法は聞いたことがない。あるとすればそれこそ禁書庫にあるレベルの魔術を魔法に進化させたもんとかか?ていうかそもそもこいつはなんなんだ)


「確かに俺は盗人だが…あんたは何者だ?というか俺の姿が見えるのか?」


銀髪の髪を靡かせながら少年は質問に答える。

「ん?俺の正体か…金が欲しいだけの怪盗さッ☆自慢するほどでもないがアニマ持ちでもあるぞ」


アニマとは強大な意志を異能にしたもので、その希少度は魔法やスキル等の他の異能とは一線を画す。

そしてアニマの能力は使い手の人柄を表す。


(ということは目の前のこいつは才能マシマシの変人ってことだな)


「了解。クセつよ人間ってことだな。ちなみにアニマの効果は?」


「クセつよってのは頷けないがせっかくの縁だしアニマを紹介しよう。この100円玉を見てくれ」


銀髪の少年は100円玉を指で弾いた。

慣れているのかその100円玉は空を切り裂き真っ直ぐ進む。


「3、2、1」

「なんだよそのカウン…」


賢治が言葉を言い切る前に銀髪の少年100円玉の位置に移動していた。


「つまりあんたのアニマは『金のある場所に転移する』能力ってことか?魂の根っこから盗人じゃねーか」


御名答ザッツライト、『coin or dead』それが俺のアニマの名前さ。最高にかっこいい名前だろ?」


「直訳するとコインか死、随分とギャンブラーな名前かつ卑しい能力に似合わないかっこいい名前だな」



「それはそうとして君は「俺の姿が見えるのか?」と言ったな。もしかして君もアニマ持ちか?」


「俺は魔力暴走のせいで極端に影が薄くなってるだけ、アニマみたいな素敵な異能じゃねーよ。だから」


「ここに来て情報を盗んで魔力暴走を治したい。なるほどな」


「おい。俺の話まで盗むな怪盗」


「ははは、面白いね君」


銀髪の少年は一息ついてから歩き出す。


「敵じゃないことも確認できたし、禁書庫に入ろうか」







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