第8話-3

追憶の焦点

第3章 皇女の守護者


2.皇女の母


「…そうですか、母とそんなことが…」

 ミーシャは母の失恋話を新室から聞いた。当然のことながら、彼女は複雑な表情を浮かべていた。

「君の母親には悪いことをしたが、後悔はしていない、どう思われても僕は一切気にしないよ」

「新室さん…」

 気まずい空気が流れる中…


「コーヒーのおかわりはどう?」

 未希が新室たちの間に入った。

「ありがとうございます、とても美味しいですね」

「それは良かった、まさか、モナクライナの王女様がうちの店に来るとはね…それに、あなたの顔を見て思い出したわ」

「え?」

「昔、あなたのお母さんと会ったことがあるの、お母さんもうちのコーヒーを褒めてくれてね…」

 未希も優美と面識があった。また二十年前にさかのぼる。


 ある日、未希は自分の店の前を掃除していたが…


「…!」

 未希は店前をうろつく人影に気づいた。それは優美だった。二人は目が合って距離を詰めていき…


「どうも、こんにちは」

「あなたは確か、新室さんの…彼に御用ですか?」

「ええ、まあ…」

「彼は居ませんよ、お仕事かと思いますけど…」

「そうですか…」

 優美は落ち込んだ顔で出直そうとするが…


「良かったら、うちの店に入りませんか、コーヒーを淹れますので…」

「え…はい…お邪魔します」

 優美は未希の誘いに乗って、彼女の喫茶店に入った。


「新室と上手くいってないの?喧嘩でもした?」

 未希のお節介な質問が飛ぶが…


「ええ、見事にフラれました…嫌な別れ方をしたので、ちゃんと挨拶しようと思って来たんですが…伝えないといけないこともあるし…」

「伝えたいことって?」

「実は…私、モナクライナに行くことになりまして…」

「モナクライナって日本の友好国の…」

「はい、モナクライナ皇帝からプロポーズを受けまして…結婚します」

 未希は衝撃的発言を耳にした。新室と優美の永遠の別れが確定した瞬間だった。

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