第7話-2

追憶の焦点

第3章 皇女の守護者


1.めぐり逢い


 時間はかなり遡る。二十年前、新室が警察組織に属していた時のことであった。

 夜の繁華街、煌びやかで妖しい街の光が多くの大人を誘惑していた。立ち寄った者は気持ちと財布の紐が緩み、アルコールを提供している店が忙しくなる頃だ。そんな空間にお忍びで通っている者もいて…


 モナクライナ皇族は、親しい日本の要人と共に一軒の高級クラブに来店していた。新室は本国要人とモナクライナ皇帝の警護を兼任しており…


「ようこそお待ちしておりました、奥の予約席にどうぞ~」

 新室はミーシャの母親、澄垣優美すみがきゆうみと運命的な出会いを果たした。彼女は当時、当店のナンバーワンホステス嬢であった。


「僕はここで…」

「お座りにならないんですか?」

「警護中ですので…飲み物も結構です」

 新室は優美にそう言って、警護対象の付近に立っていた。


 本国要人とモナクライナ皇帝は新室を信頼して、夜の優雅な時間を過ごしていた。

「………」

 優美は接客しつつ、直立不動の新室のことを気にかけていた。

 そして、時間が流れていき、本国要人とモナクライナ皇帝は店を後にするのだが…


「どうもお世話になりました、良いお店ですね」

「大変なお仕事ですね、お手洗いにも行かず、ずっと立った状態で…」

「…あなたこそ、こんな時間まで働いて立派ですね」

「慣れればどうってことは…普段、お酒は?」

「たしなむ程度に…次は私用プライベートで来るかもしれません」

「そうですか、お待ちしております」

 新室と優美は僅かの会話で意気投合していった。数日後、新室は優美が働いている店に訪れた。社交辞令じょうだんではなく、彼は澄垣を指名した。

 

 客としてやってきた新室は過酷な職場環境から解放されて、とても楽しそうだった。やがて、彼らが会う回数が増えて関係が深まって、二人は自然と魅かれ合った。大人の付き合いから同伴アフターの枠を超えて、二人は恋に落ちた。

 新室が今までどういった女性と交際していたか定かではないが、優実は素直に心を許した女性ひとだった。彼はいわゆるである。


 新室たちはお互いの予定を合わせて、関係者の目を気にしながら、密かに都内のホテルに宿泊していた。短期間で恋愛に発展した男女二人は、予約したホテルの一室で貴重な夜の時間を堪能していたが…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る