最終話:さあ俺たちの住処に帰ろう。
「俺は一度、アジトに戻ってみるからな・・・様子を見てくる」
「情報は逐一知らせてやるよ」
「しばらくここでゆっくりしてな」
そう言ってザルは帰って行った。
「ノルン・・・こっちへおいで」
部屋の中は暖かかったけど、パンはベッドでノルンと毛布に包まった。
そうしていたかった。
時が止まったように、まったりとした静かな空間。
その雰囲気が心地よかった。
このまま永遠が続けばいい・・・。
そしてどちらからともなく、お互いを求めた。
一度結ばれてしまうとそれはクセになる・・・愛さずにはいられなくなる。
お互いを確かめたくなる。
ふたりは、二度と戻らない時間の中にいた。
求めては愛し合い、愛し合っては求め合った。
「大好き、パンちゃん・・・愛してるよ」
「俺も愛してる」
「私もう離れない・・・絶対」
「うん・・離さない」
「少し寝たら?・・・」
「うん・・・抱いて・・・抱かれたまま眠りたい」
ノルンはパンに抱かれて眠った。
いつの間にかふたりとも疲れきって寝てしまっていた。
スマホの着信音でパンは目覚めた。
ザルからだった。
「喜べ、パン」
「ガイノメディックだけどな、ヒューマノイド探索、打ち切ったぞ」
「情報が回ってきたんだ」
「全ヒューマノイド回収したってニュースでも報道してた」
「ほんとか?」
「たぶんだけど、偽のノルンちゃんが役になってくれたのかもな」
「そうか、あれバレなかったのかもな」
「ちょろいもんさ」
「だから、もうおまえの住処に帰っても大丈夫だろう」
「終わったんだ」
「よかった・・・もう逃げ回らなくて済む」
「ザル、いろいろありがとうな・・・世話になった」
「まじで、ありがとう、持つべきものは友だな」
「いいってことよ、それじゃ〜な」
「いちゃついてばかりいなくてさ、たまにはノルンちゃん連れて遊びに来いよ」
「ああ、分かった・・・行くよ」
「ノルン・・・終わったよ・・・もう心配ない」
「もう誰もノルンを脅かす者はいないよ」
「さあ俺たちの住処に帰ろう」
ノルンは安心したように微笑んだ。
パンはノルンをバイクに乗せて夕日に染まる街に向かって走り出した。
ふたりを乗せたバイクの影が道路に長く伸びていた。
だが、ふたりの後を怪しげなジープが追っていたことをふたりは知らなかった。
END.
よろしくノルン。 〜ガイノイドの思惑〜 猫野 尻尾 @amanotenshi
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