僕

僕

ぼくは人間なんだ

どうしてみんな

それをわかってくれないんだろう

忘れてしまうんだろう

気が合った女性とメールのやりとりをしたら

休日に会うことになって

なんだかそのときの彼女の目が

今にも溶けそうな　ガトーショコラみたいな

目をしていて

こわくて家に帰ってきた

ぼくは人間でいたいだけなんだ

どうしてひげが生えてくるんだろう

気持ち悪いから

脱毛をして毛を失くした

どうして体臭がするんだろう

気持ち悪いから

肉を食べないようになった

どうして

女性は僕とキスをしたいというのだろう

気持ち悪いから

あまり目を合わせないようにした

ぶらぶら揺れるペニスも

骨ばった肩も

無駄に筋肉質な腰もきらいだ

男たちが発す　猥褻な話も

聞くに堪えない笑いも

頭痛とめまいがしてくる

この世界には

おんなとおとこしかいないのか

ホルモンとか遺伝子とか

そんなのどうでもいいんだよ

どうして　ぼくを　人間にしてくれないの

おんなもおとこも

ぼくのことを性的な目で見ないでくれ

人間が興奮したときの

あの呼吸と鼻息が

ぼくはだいきらいなんだから

いったい理性がないのは

きみなのか　ぼくなのか

科学は安心材料の

ひとつに過ぎないんじゃないか？

静けさを取り戻すために

猫をなでる

ああ　ほんとうに

だれかそっと

ぼくを絞め殺してくれたらいいのに