日記 22240213

義為

本編

 2224年2月13日、晴天。

 

 今日は大仕事があったけれど、日差しに暖められた爽やかな風が疲れを吹き飛ばしてくれた、良い日でした。

 

 まずはこの日記を見る人のために、私が誰か、この日記をどうして書いているかを説明しようと思います。


 私はイヴ。変な名前だけれど、母さんが付けてくれた、大切な名前。

 この間15歳になった女の子です。

 私に同世代の友達は居なくて、近所のおばちゃんと仲良しです。


 母さんはファッションデザイナー、父さんは学者です。

 立派な仕事をしていて、尊敬します。


 この日記は、タブレットとタッチペンで書いています。

 昔あったという紙とペンよりも滑らかに文字を書けますし、簡単に燃えたりしません。

 

 閑話休題。

 この言葉、一度書いてみたかったんだ。


 今日は大変でした。

 

 父さんが急に、

「子供が欲しい」

 なんて言い出したのです。


 私は

「妹が居たら、仲良しになれると思うの」

 と返しました。


 すると、父さんが倒れこんできました。

 私はびっくりしてするりと避けました。

 

 父さんは頭を打って、動かなくなってしまいました。


 私は、父さんから聞いた昔話のように、土に深く掘った穴の中に寝かせてあげました。


 母さんも、母さんに恋した街の男の人たちみんなも、私が生まれてすぐに眠ったそうです。

 近所のおばちゃんも今は眠っています。

 

 父さんは言っていました。

 「イヴ、ここは楽園なんだ。土の中で眠った人たちは、いずれここで生まれ直すんだよ」

 

 きっと、父さんもいつかこの町に生まれてくるのです。


 また会いたいな。




 タブレット粘土板はここまでで途切れている。

 

 

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日記 22240213 義為 @ghithewriter

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