和歌を詠む。剣技:紫の劇中歌。

戦徒 常時

時を経て 花々の色 移るとも 夕日変わらず 緋く染めるや

 2つご紹介します。1つ目は『第19話 汚名挽回』から抜粋です。


 時を経て 花々の色 移るとも 夕日変わらず 緋く染めるや


 この歌は主人公の緋川ひかわ葵の先祖である武士が緋川姓を賜ったときに詠んだという設定で作りました。

 名字を賜る以上は華々しい活躍をしたはずということで、そのときに、絶技【花散里はなちるさと】という技を使って、周囲一帯を赤く染めたことに由来します。

 そして隠し題は絶対に入れたいと思い、緋川ひかわの名を授かったときであれば、「ひかわ」を入れるのが妥当では、と思案した次第です。

 ただ、古文の発音の観点から隠し題として機能するか自信はないのと、単語の活用を間違えていそうで怖いですね。

 ちなみに、当初の設定には無く完全に思いつきでした。あ、最初は緋と葵(主人公の名前)の青で紫だなあ、と言う意味しかありませんでした。


 意味としては、

 花の色は移り行くけれども、夕日は変わらず川を緋く染めるように、緋川一門は子々孫々お仕えして、大地を緋く染めて見せましょう

 という意味になればいいかなと思って作りました。そのとおりに読めるかはちょっと自信ないです。


 源氏物語厄介ファンであれば「たをやめぶり」を理解しているはずで、一方で、武士でもあるので、漢字多めのテイストに仕上げようかなと考えていました。



 参考にした歌は小倉百人一首から小野小町の一首では、


 花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに


 です。


 そしてこちらの影響の方が強いですが、たぶん美空ひばりさんが歌う

「川の流れのように」 作詞:秋元康

 「川が黄昏に染まるだけ」いい歌詞ですよね。




 2つ目はこちら。『第51話 六条』より抜粋


 一太刀受ければ 春風光る 天上人の 身はかろ

 再び切られば 楽地落胆 空の忘れ路 人の性

 三条断たれば 憤怒憤懣 悪鬼羅刹の 修羅の道

 四度斬られば 天駆ける羽 再び得るも 籠の鳥

 五回受ければ 傍ら苧殻おがら 濡れ手に粟の 餓鬼の道

 六条祟れば 望み消え果つ ゆえに六条 地獄堕ち 


 7・7・7・5の都都逸6連です。

 源氏物語作中最恐キャラである六条の御息所から取った呪殺の剣技の詠唱です。

 上から順番に天道・人間道・修羅道・畜生道・餓鬼道・地獄道です。

 仏教の六道ですね。


 悩んだのは回数表現と切られたことを示す表現でした。三条で断たれば、六条で祟ればでごまかしました。以上です。



 気が向いたら拙作、『剣技:紫 ~源氏物語厄介オタク御家人の末裔はその武術で異世界を切り拓く~』もお読みいただけたら幸いです。

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和歌を詠む。剣技:紫の劇中歌。 戦徒 常時 @saint-joji

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