第4話 地球人類の誕生

 宇宙の管理に携わる高次の「存在」の彼らは基本的に身体を必要としない。しかし、必要に応じて人間の前に姿を現す時は我々人間と同じ姿をとって現れた。それは恐怖を感じたり驚かせたりさせないためである。滅多に現れることはないものの(もっとも普通の人間と同じ姿に化けられたら気づくこともないが)地球上に人類が誕生した時や、のちに文明というものが起こる際には現れて活動した。ただ、人間と明らかに違う姿形を取らない限りは誰も神だとは気づくこともなかったようである。

(今後はその“高次元の「存在」”という呼び方を改め、短く「神」と呼ばせて頂く。)

 さて、詳細は後に話すとして、神はこの地球の地上に人間の元となる型を他の惑星から携えて訪れた。環境は違えどDNAや染色体で構成されているのは高次元の能力者だけの惑星を除けば他の惑星生物も同様らしい。「Eの園」と呼ばれる伝説的存在である場所は耳にしたことがあると思うが、まさにそこには人類の元となる一組のペア「A」と「E」が誕生した。神の言いつけを守らずあろうことかEは禁断の果実を食べてしまったうえにAにも勧めた。神は「試す」こともお好きなようで、結果、そのような行動を取る様子も進化研究の観察視野の一環に含まれていたのだろう。

 どうにも人間というものは原初から決め事を守れない生き物であったようだ。それからの二人は自然に引かれ合う本能から子孫を作る。Eは最初「KとA」を生むが、物心つく頃、つまらないことで兄であるKは弟Aに対する嫉妬を抱き彼を殺害してしまう。人類史上初めての「殺人」の「罪」がそこでも発生してしまった。神はその二人をはじめ、人間の元となる数種をペアで地上(大陸)の数か所に配置して進化過程を観察した。(古代においては近親婚が多かった…同種族を残そうとする本能作用も働く)それらの子孫が集落を築くことで規模が増々大きくなり、他の集落との交易も始めることでさらに技術も生活も向上していくことになる。結果それが文明発祥の基盤ともなっていった。

 人類の“進化論”なるものがありましたが、人間は最初から人間である。その証拠に魚は魚のままで水の中で暮らし、両生類は両生類のまま、猿は現在も猿のままで人間にはなっていない。言葉や肌の色、進化や文明の違いはそれぞれに配置された人間の元となるDNAや染色体の違いによるもので、指導者によっては言葉や文字にも違いや変化が生じるものである。

 「知恵」や「技術」がまだ何も無かった人間たちにヒントを与えるためにその当時のその土地の姿に合わせたスタイルをとり、不信感を与えないようにして、コミュニケーションを上手に取り指導していった宇宙の協力者たちこそが「神」であり、太古の昔から人間は何も知らずにその恩恵に預かってきたのだ。



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