なんか生まれちゃった人工生命体〜主殿?あーた俺の扱いが雑過ぎませんか!?〜

鋼音 鉄

第1話 俺なんか生まれちゃったみたい!人工生命体ってなに?

「誰すか、あんた」

「……え?え、あ……えぇぇ!?」


目の前で大声を挙げる金髪の女性に無名は首を傾げる。何がそんなに可笑しいのだろう、と思い、立ちあがろうとして気づいた。自分とはなんぞや、と。自身の肌をペタペタと触ってみると硬く、金属質だった。並大抵の攻撃ならば、どれも通さないであろう。


自身の体を見てみると、首元には001という番号が刻まれていた。その番号は何故か無名の頭にインストールされてある某刑事でライダーで仮面の人の作品を思い浮かべてしまうが、これは関係ないと即座に消す。


無名はこれがどんな事なのか、考えに考え抜いた。その結果がこれだ。


「なるほど。つまり原初のハッピーニューイヤーというわけか!」

「全っ然違うからね!?それ新年を祝ってるだけだから!」

「えぇー……誰すかアンタ!?」

「さっきもこのくだりしたよね!?」


先程もしたくだりを何回かやった後、無名は目の前の少女が何者か、そして自分はどういう人工生命体なのか、という事を聞き出す。


嘘を吐いたら許さない、と言葉は出さなくとも瞳が語っていた。先刻まで散々ボケていた姿が嘘のようである。生まれたばかり、そして製作者には反抗できないようにされたのだが、それでもその威圧感で後ろに下がってしまう。


感情を感じさせない冷徹な眼が少女を貫く。これが本来の姿で、あれは偽りの姿と言わんばかりの冷たさだった。少女は無名の言葉に唾液を強く飲み込んだ後、息を深く吐いて喋り始める。


「私はクレア・ヘンゼル。ヘンゼル公爵家の長女で貴方の製作者よ」

「ヘンゼル……エンゼルクリームみたいな名前ですね」

「台無しだよっ!」


クレアの言う通り、台無しになったしまった。真剣だった先程の空気が一言によっておふざけ空間に変化を果たしてしまったのだ。


クレアはため息を二度吐いた後、疲れたような眼で此方を見る。無名は何にそんな疲れているのかが理解できず、頭を傾げる。そして頭を傾げていると思いついた疑問をクレアに向かって問う。


「俺の名前って何ですか?」

「今聞くところそこなの?なんて非人道的な事を!とか人の心は存在していないのか!とか、そんな事を言ってくるものだと思ってたんだけど」

「いや、俺に人の心を問われてもだから何?ってなるでしょ。機械なんだから人の心がある訳ないじゃん。あるとしても機械の心だよ」


無名の言葉にクレアは確かに、と呟いて頷く。どんな心を持ったとしてもそれは人の心では無い。


無名が心を持ち、それで訴え掛けても持っている心は機械の心なので人間の心が分かる訳がない。理解できる訳がない。それが無名の持論だ。


頷いているクレアを無名は見る。頷いてばかりで無名の名を呼ばないクレアを見る。無名は決して怒ってはいない。名前が何なのか、それを全然教えてくれない事に対して怒っては無い。ただ、パイ生地をぶつけたい程、心の炎が燃え盛っているだけだ。無名は何の予備動作も無く、パイ生地を投げる。


無名は避けられる事を予想していなかった。避けれないと思っていたのだ。しかし結果は予想を超えた。避けられたのである。


しかし無名は止まらない。名前を教えてくれない怒りはその程度で止まる事など無いのだ。


「分かった!名前を教えるからパイ生地を投げるのやめて!」

「しゃあない。許してやる」

「ありが……パイ生地投げてるよねえ!?自身の言葉を覚えていらっしゃらない!?」

「覚えてる。だからこの生地パイ一つでお終いにするんだよ!」


無名は一際大きいパイ生地を生み出し、クレアに向かって放り投げる。クレアは当たる前に一瞬で消えたと感じたら背後から声が聞こえ、頭に衝撃が伝わってきた。








「反省した?」

「さーせんした」


無名はクレアからの打撃を喰らった事で頭にたん瘤を浮かべていた。剛鉄の機械なのにそれを通すとはどんか攻撃力をしているんだ、と思わなくは無いが、これ以上言ったら更に打撃を喰らいそうなので口に出すのはやめておく。


クレアはその言葉を聞いた後、パイ生地がぶつかってある壁を見てため息を吐く。掃除が後々大変だ、と考えているのだろう。


しかしそんなクレアのため息の意味すらも考えず、無名は名前でワクワクと心を踊らせていた。そんな無名に呆れたような視線を送りながらも、クレアは無名の名を口にする。


「アレス、それが君の名前だよ」

「良い名前だ!……何でその名前にしたのか聞いても?」

「うん?良いよ。作者がイナ○レのアレス○天秤が割と好きだからね。其処から取ったんだよ。一番好きなのは無印みたいだけど」


無名……いや、アレスはクレアの言葉に呆れのジト目を披露する。流石にメタ過ぎるからだ。これまでこんなメタ発言をしたのは作者の作品の中には存在していない。


しかしアレスは気持ちを切り替える。名前を貰ったことで上機嫌に鼻歌を歌う。アレスという名、響きがカッコいいからだ。割と不人気であるアレス○天秤から取ったのは少し不満ではあるが。


「少し聞いて良い?クレ……主殿。何で俺を造ったんだ?」

「……味方が欲しかっただけだよ。人間は信用できない人が多いから」

「なるほど……魔力燃料ガソリン飲む?」

「飲むか!」

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