婚約破棄された悪役令嬢は、訳のわからない、以下略。

touhu・kinugosi

第一話

「ツンデッレ公爵令嬢、あなたとの婚約を破棄、以下略。

 オーソドックス王太子が言った。


「何故ですか?」

 口元を扇子で隠した、ツンデッレ公爵令嬢は、以下略。


「しらじらしいっ、ここにいるフェイクパイ男、以下略。

 王太子のかたわらには、不自然に大きな胸をした、以下略。


「え~ん、ツンデッレ様にイジメられたんです、以下略。

 フェイクパイが王太子にされた胸部を、以下略。

 

「そんなことしていませんヮッ」

 ツンデッレが、金髪ドリルを無遠慮にひろげ、以下略。


「嘘をつくな」

「ひとこと謝ってくれればいいんです~」


「イジメに心当たりがありませんノ」


「彼女のノートに、無駄に出来のいいパラパラ、以下略。

「授業中に吹きだしてしまったんです~」


「さらに、元庶民で必死に勉強している彼女の、以下略。

「紅茶が青汁に変わってたんです~」

「お通じが良くなりました~」


「他にも、疲れ切った彼女を拉致したなっ」

「足つぼマッサージ痛かったです~、内臓が弱、以下略。


「彼女の行く先の階段全てをエスカレーターに、以下略。

「階段がとても楽です~」

 ・

 ・

 ・



 携帯に以上の文章が書かれている。

栞子しおりこ、これはひどいっ」

 僕は彼女の携帯を後ろから覗きこんだ。


「何よ、覗かないでよ」

 彼女が、ぬれたカラスの羽のような色の黒髪をひるがえしこちらを向いた。

 白い首筋がちらりと見える。


 彼女の名前は、紀伊国屋栞子きのくにやしおりこ


 容姿端麗、才色兼備、学園一の美少女だ。

 さらに、何冊も書籍化した人気なろう作家でもある。


「なろうテンプレの素晴らしさを自分なりに表現しているだけじゃないっ」

 文学少女のような黒縁眼鏡がキラリと光る。

 

 ――たしかに、以下略の続きが普通に頭に浮かぶけど


「……本音は?」


「お~ほっほっほ、高度に飼いならされたなろう読者には、一文、二十文字で上等なのよ~~~~」

 栞子しおりこが、豊かな胸を張りながら言った。

 悪役令嬢がのり移ったようだ。

「でも、低ポイントでランキングしたいから、ジャンルは、”その他”で出すつもりよ~~⤵」

 罪悪感をにじませ、うつむきながら言う。


「……いや、異世界恋愛とが混じってるからいいんじゃないかな?」

「……そうかしら」


「!」

 僕はあることに気づいた。

「僕と栞子しおりこは幼馴染だよね」


「? そうよ、家が隣同士じゃない」

 親同士も仲が良い。


「僕たち付き合ってるよね」

「な、なによいきなり」

「……そうよ……」(←ささやくような小さな声)


「じゃあ、なろうテンプレ的に、幼馴染がヤリチンのにせイケメンにNTRされ……」

 キッ

 と栞子しおりこに睨まれた。

 少したれ目な瞳が黒縁眼鏡の奥で光る。


「うっ」


 さらに、

 ジワリ

 とまなじりに涙が浮かぶ。


「……シュー君、私のことが嫌いになったの……?」

「いやっ、そんなことはないよっ、僕は栞子しおりこのことが大好きだよっ」


 二人はしばらく見つめ合う。


「……ん……」


 栞子しおりこが目を閉じて少し顔を上げた。

 ――くっ、可愛いっ

 チュッ

 僕は、彼女の口に軽く触れるくらいのキスをした。










 


 この後、テンプレ通り二人にNTR展開が広がるかはかみ(筆者)のみぞ知る。

 多分ないけど。

 小説家になろうにも掲載しています。



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