第2話 油断が招いた失態
襲撃されたのは北の軍港。
ダフネ帝国最大の軍港が漁船のような小舟によって、壊滅状態に陥った。
ダフネの海軍も、この嵐の中を攻めて来る無謀な
ダフネ帝国は北の海の絶壁を利用した軍港を有していた。
対して、南の海はノイスール国の軍港だ。
二つの国は南のノイスール、北のダフネで陣を張り、睨み合うかのように牽制し合い、出撃の好機を狙っていた。
「ダフネの軍港が壊滅だと?」
いち早く知らせを聞いた海軍少佐のエーミルは、おもわず声をうわずらせた。
ノイスールは小国ではあるものの、金や銀の鉱山を多数持ち、ダイヤモンドを
豊かであるがゆえに敵も多い。
それを海のエーミル、陸のゲオルグの双頭の鷲と謳われる二人が指揮する
ノイスール国の北側にはダフネ帝国が陣を張り、膠着状態が続いている。
そんな中での北湾への奇襲攻撃は海軍に大打撃を残して去った。
エーミルは、双頭の鷲と謳われる陸軍少佐のゲオルグが馬に乗って石作りの広場を駆けて来ると、自分の方から近づいた。
エーミルは、純白の軍服の肩章から金の組紐が半円状に吊り下げられ、左胸のポケットの上にこれまでの功績を称える勲章が並んでいる。
ゆるい巻き毛の金髪と青い瞳がひと際映えるいでたちだ。
「聞いたか?」
「もちろん」
「攻めてきたのはどの国だ?」
「わからない。軍艦ではなく、漁船のような小舟を使った奴らだそうだ」
エーミルの返事を聞いたゲオルグは拳を肉感的な唇に当て、思案する。
「そんな小舟でダフネ帝国に牙を剥くなど信じがたいが……」
エーミルの美貌とは真逆のゲオルグは、男らしい精悍な顔立ちだ。凛々しい眉をひそめた彼は、万が一にも目撃者がいないかどうかを周囲に向かって確かめる。
雨は止んだが、海風がゲオルグの黒い軍服の上着の
ゲオルグは濡れそぼる黒髪を何度もかきあげ、手のひらで顔をぬぐって問いかけた。
「あの嵐の中だ。顔はともかく身なりだけでも見た者はいないのか?」
「それでしたら恐れながら……」
海軍の将校が進み出て来て一礼する。
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