第17話 桜散る
街角で、俺の知らない男と笑っている君を見かけてしまった。
家に帰って、早々に煙草に火を点ける。君が嫌いだと言ったから、君に前では一切吸わなかった煙草を。この部屋に君と2年一緒に住んだ。ある日、桜の枝と手紙を置いて出ていった君。俺は君からの愛情がなくなっているなんて、全然気づかなくて。掃除も洗濯も最後までしていってくれた君。
悲しくなかった。だって、目を瞑ると君は泣いていて。だから、君はいずれ戻ってくるものと思っていたよ。煙みたいな幻想だった。
今、目を瞑ると君は今日見たように笑っている。それが苦くて、苦くて。
とっくに、桜は散っていた。
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