幼馴染の恋は・・・。

猫野 尻尾

第1話:太陽と月。

【バレンタインデー記念企画】


一話完結です。

書けてしまったので、もったいぶらないで前倒しで投稿します。


日本のバレンタインデーといえば女性から男性へ、チョコレートやギフト

とともに気持ちを伝える日。

でも多くの諸外国では「男性から女性へ愛を伝える日」と位置づけられており

バラの花やアクセサリーなどを贈ることが慣わしとなってるんだって。


そのため、男性から女性へチョコやプレゼントを贈ることは大いにアリ。

最近では日本でも「逆バレンタイン」が浸透しつつあるので今年は少し趣向を

変えて男性からチョコやプレゼントを贈ってみては・・・。



俺には幼馴染の女がひとりいる。

俺の家の前の道路側で営業してる理髪店の娘。


佳宵 美月かしょう みづき」って言う。


美月とは同じ高校の同級生・・・ガキの頃から一緒。


でもって俺の名前は「空韻 朝陽そらおと あさひ


ガキの頃の美月はスカートを捲くし上げてパンツ丸出しで近所の雑貨屋まで

自分んちの店の前を全力疾走で駆けていく、そんなお転婆だった。


だからか、足は速い。

俺より速いかも・・・確実に速いな。


同い年だから、当然一緒に小学校に入学した。

小学生の時は美月のことは兄妹と同じ感覚だった。

好きとか嫌いとかって気持ちは美月にはワキもしなかった。

女の格好はしてるけど性格はまるっきり男だからな。


で、同い年だから当然同じ中学校に入学した。

中学に入ると、なんとなく女らしくなった美月。

もうスカートを捲し上げてパンツ丸出しで走ったりもしない。


そして同い年だから当選一緒に高校に進学した。

その頃には美月は、めっちゃ可愛くなっていた。

女子高生になったとたんに可愛さがパワーアップしたんだ。


女ってのはもう・・・変わるもんな、それもどんどん美人になって行く。

とうぜん俺は美月を意識しはじめる。


なんで俺の心を乱すような、そんなにいい女になるんだよ。

気になってしょうがないだろ。

にわかに膨れ上がる俺の美月への想い。


まあでも、急ぐごともないかって余裕こいてたらクラスの男子の誰かに

美月は告られたらしい。

考えてみたら俺が惚れる女だからな、告られたからって不思議じゃないんだ。


まあ、相手の男子には「おとといきやがれ」って蹴ったみたいだが・・・

油断できねえ。

今回は事なきを得たようだが危ない危ない。


このままじゃ、いつか誰かに美月を持って行かれるか分かったもんじゃない。


今、そこにある危機を感じた俺は、バレンタインの日に俺の想いと一緒に

美月にチョコを渡した。


「美月・・・これ」


「なに?」


「チョッコレート・・・バレンタインだし・・・」


「バレンタインって女の子から男の子にチョコ贈るもんでしょ?」


「逆バレンタインっつうやつだよ」


「ふ〜ん、ありがとう・・・でもどう言う風の吹き回し?」


「あのさ、おまえ、オレの彼女になってくれないか?」


「はあ?」


「だから俺の女に・・・」


「あっさり言うね」

「朝陽とは長い付き合いだよね、今更なに言ってんの?バッカじゃないの?」


「おまえ、この間、男子に告られただろ?」

「俺マジで焦ったよ・・・」

「で思ったんだわ・・・誰かにおまえを持って行かれる前に俺がツバ付けとこう

と思って・・・」

「これでも遅いくらいだよ」


「朝陽・・・言っとくけど、だいたい幼馴染同士の恋は実らないって相場が

決まってんだよ・・・」

「カッコ悪いとことも恥ずかしいこともよく知ってるからね」

「それに喧嘩になったらお互い容赦なくなっちゃうでしょ?」

「しかも腐りかけの魚みたいに新鮮じゃないしね」


「なんで今更、私が朝陽の彼女になんかならなきゃいけないの?」


「そりゃおまえ、俺がおまえに惚れてるから・・それ以外の明確な理由が

あったら教えて欲しいわ」

「うじうじ告られるより単刀直入でいいだろうが・・・」


「気持ちがまっすぐすぎるの」


「俺はストレートが好きなの・・・変化球で討ち取ろうなんて姑息だろ?」

「なあ、考えてくれないか?」


「え〜・・・朝陽とぉ?」

「お調子者で無精者でヘタレでガサツでウザったらしい朝陽と?」


「言い過ぎだろ・・・俺は無精者だけどヘタレでもウザくもないわ」


「俺のこと、クラスの女子ん中でおまえが一番よく知ってくれてるし、

分かってくれてるんだから、なにも知らない同士と違って手っ取り早くて

いいと思わねえか?」


「分かりすぎてるってのも問題だけどね」


「ちなみに美月、誰か他に好きなやついるのか?」


「ん〜まあうちのクラス、朝陽も含めてロクな男子いないからね」

「しいて言うなら生徒会長の水田くらいか? まともなの・・・」

「他の男子から告られてもこっちから願い下げだね」


「なんだよ、水田みたいな軟弱でキモいのがいいのか?・・・」

「生徒会長って肩書きがいいんじゃないのか?・・・」


「そうだね、私に彼女になってほしかったらせめて生徒会長くらいにならないと

無理かもね・・・」

「もし来季、生徒会長になれたら考えてやってもいいよ」


「そんなの一生無理に決まってるだろ?」


「そうだね、朝陽って人望ないもんね」


「生徒会長なんて俺にはハードル高すぎ・・・」


「じゃ〜あきらめな・・・朝陽が生徒会長になるまで彼女になる件は保留ね」


なんて無謀で馬鹿な条件なんだよ?

永久に諦めろって言われてるようなもんじゃないかよ。


だけどそうはいくか、俺も美月に彼女になってくれって一旦クチに出した

からには男として後には引けねえ。


諦めきれない俺は、その日から選挙活動を開始した。

美月を俺の彼女にするために・・・俺が生徒会長になるために・・・。

活動たって友達を一人でも多く増やすこと、広〜く浅〜く。


なにがなんでも、執念で美月を俺の彼女にする。

だけどな決心なんてのは日ごとに、あやふやになって行くもの。

弱気になった俺は、俺と美月は縁がなかったのかなって思い始めた頃。


それはホワイトデーの日。

美月からバレンタインのお返しだってチョコをもらった。


おお、そんなことしてくれるんだ・・・美月からチョコなんて一度も貰った

ことないし・・・彼女になってくれるって件は今のところ保留だけどチョコは

もらって悪い気はしない・・・義理でも嬉しい。


ハートマークのデザインの赤い包みを開けてチョコを食べようと思ったら

中にメッセージが一枚入っていた。


そのメッセージにこう書かれてあった。


「朝陽が生徒会長になるまで待ってたら、私がおばあちゃんになっちゃうよ

それまで待てないから彼女になってあげてもいいよ」


そう書いてあった。


そして次の朝、俺が学校に登校しようと玄関を出たら、そこに美月が立っていた。


「今まで別々に登校してたけど、今日から一緒に登校しよう」


そう言って美月は俺に向かって満面の笑みを浮かべた。


朝陽の熱い想いは美月に届いたじゃないですか。

とりあえず、めでたしかな。


バレンタインデーをきっかけに始まった幼馴染同士の恋・・・さて、果たして

実るんでしょうかね。


おしまい。


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