第6話







 山賊が投げたナイフはヒルデガルトに瀕死の重傷を負わせた。


 意識を失っているヒルデガルトは公爵家の寝室で身体を横たえているのだが、医師が必死になって治療したにも関わらず彼女の顔は死人のように白い。


 うわあああん


「お前のせいでヒルダが!!」


「ミカエル殿下のように王子として研鑽を積んでいたら、ヒルダはガブリエルてめぇの子守りなんて押し付けられずに済んだんだ!!!」


 ひっく・・・


「ヒルダちゃんが、死にそうなのは・・・僕のせい、なの?」


「「「「そうだよ!!!」」」」


 公爵一家に責められたガブリエルは自分がヒロインだと言わんばかりに、背景(バック)に無意味なキラキラと花を背負いつつきょとんと首を傾げる。


ガブリエルてめぇが弱いからヒルダが傷ついた。その事実は覆らない」


「僕が、弱いから、なの?だから、ヒルダちゃんが、傷ついた・・・?」


 ロキの一言に俯いたガブリエルは拳を強く握る。


「・・・・・・僕、ヒルダちゃんを護れるくらいに強くなる!!」


「「「「は?」」」」


 ガブリエルの宣言に公爵一家が思わず間の抜けた声を上げて驚く。


「ヒルダちゃんが傷ついたのは、僕が兄上のように王子として何もしてこなかったからなんだよね?」


 だから・・・決めたんだ!


 ヒルダちゃんを護る為に僕は強くなるって!!


 グリーンローズ公爵親子に力強く宣言したガブリエルは公爵邸を出て行くのだった。


「父上、母上、ロキ。何か決意をしたら過去の自分と決別する意味で髪を切るのがお約束だと思うのだが・・・」


「そうだな」


ガブリエルあいつ、それをやらなかったな・・・」


 ガブリエルの行動に呆気に取られてしまったユミルとロキの声が虚しく響く。






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