日本最大の港の一つ横浜。
その歴史は実際に起きたペリー来航によって、港が開かれたことから始まります。
その変化を、当時人々共にあった神の視点で描かれます。
神と言っても、大仰な神ではなく、本当に人々に慕われていた小さな社に住まう神、弁財天。
弁天とも呼ばれるこの神様は、音楽を愛し、人々に幸福をもたらす神ですが、この物語の中では人々共に在って、人々を見守る存在。
その神の目を通して、幕末から変化していく横浜という街の様子を見ていく物語です。
緻密な調査に裏打ちされた当時の雰囲気の描写が素晴らしく、幕末の空気を感じ取れます。
私自身横浜市に住むので、とても楽しく読ませていただいています。
弁天と、おつきの宇賀神が織りなす横浜幕末奇譚、お楽しみください。
幕末の横浜を舞台に、弁財天と従者の宇賀神が黒船来航を見守るファンタジー作品です。
登場人物たちがチャーミングに描かれていて、読んでいてほほえましくなりました。弁財天は芸事好きな愛すべきキャラクターで、音楽に夢中になる姿が印象的です。そして宇賀神は主である弁財天を心から慕っていて、二人の信頼関係が素敵でした。そのやり取りに癒されます。
時代背景もよく調べられていて、黒船来航や日米和親条約締結の出来事が、弁天たちの視点からユーモラスに描写されています。増徳院の僧侶・清覚や薬師如来など脇役も魅力的で、物語に奥行きを与えていました。
そしてアメリカ人との文化交流を通して、横浜村の人々の暮らしが少しずつ変化していく様子が丁寧に描かれ、読後感も爽やかでした。弁天社から打電されたYOKOHAMAという文字が象徴的で、未来への希望を感じさせます。
ファンタジーでありながら等身大の人間ドラマになっているところがいいと思いました。笑いあり涙ありの物語に引き込まれ、あっという間に読み終えてしまいました。続きが気になりますし、またこの弁天と宇賀神の活躍を読みたいです。