第45話 三人の意思

「元気な子だったわね」

「ぱ、パワフル……!」

「いやもう、本当にすみませんでした……!」

「謝らないで。良い子じゃない」

「ずっと、アキラのこと、気にしてた……よ?」


 マドカが帰った直後。台風直撃並みの被害を精神的に受けた俺はぐったりしていた。

 アーシャとヤイロのフォローが心に染みるぜ……!


 というか俺はもう二人には頭が上がらないかもしれない。

 誤解されて妹から汚物を見るような視線を向けられた俺を助けてくれたのだ。


「マドカちゃん、ちょっと」


 アーシャとヤイロはマドカと二人でこそこそと話を始めた。ちらちらとマドカの視線が俺に向けられた時は気が気じゃなかったが、15分ほどの話を終えたマドカはなぜか満面の笑みだった。

 どんな魔法を使ったのか、今後の参考のためにも聞いてみたいものだ。


「んー……! 誤解だったみたい! ごめんねお兄!」

「だからそう言ってんだろ……」

「でもなのは直さないと駄目だよ? 本当に嫌われちゃうからね?」

「……何の話だ?」

「そういうところ! ……ってお説教したいけど今日の所はアーシャさんとヤイロさんに免じて許してあげる!」

「ありがとう……?」

「邪魔しちゃ悪いし原宿行きたいから帰るね!」


 こうして妹のマドカは台風のように去っていったのだ。


「ちなみに、俺だけ除け者にして何の話をしてたんだ?」

「な、何でもないわよっ!」

「……自国開発…………将来、設計……?」

「ヤイロ! 余計な事言わないの!」

「でも……報酬、何でもって……」

「ヤイロっ!」


 どうやら何か適当なことを言って丸め込んだっぽい。

 まぁしばらくすればマドカも落ち着くだろう……落ち着くと良いなぁ。


「あー……とりあえず今日の埋め合わせは必ずするよ」


 俺の言葉に二人はきょとんとしながら顔を見合わせた。

 それから二人そろってくすくす笑う。


「何言ってるのよ」

「埋め合わせ、したの……私たち、だよ?」

「……ハァ?」

「助けてもらったからね。寂寥蜘蛛ソリトゥード・アラネイアからも、誉田からも」


 文字通り頑張った面と向かって言われると気恥ずかしい。

 ……というか、ヤイロも?


「むしろ巻き込んだ系じゃないか?」

「D班、勧誘……されてた……強引なの」

「なるほど」

「それに、ついてったの……自分の、意志、だから、ありがとっ」

「……どういたしまして。まぁ、俺もヤイロがいなきゃ死んでただろうけど」


 都市の治療を受けたのは事実だが、ヤイロがいなければまで保たなかっただろう。アレックスの炎は確実に俺の命にまで届いていた。

 助けてもらったのはこっちの方だろう。


「それに、アーシャもな」


 回復するまでの——あいつらをぶちのめすための時間を稼いでくれたのはアーシャだ。


「べ、別に? 大したことじゃないし!」

「うさ、耳……可愛、かった……!」

「それはやめて! 恥ずかしかったんだから!」


 真偽不明ながら存在しているアーシャのファンクラブにうさ耳アーシャの動画が出回っているとのことだ。

 まぁヤイロが言ってただけなので本当かどうかわからないけど。


「しっかし、よく生きてたなぁ……また狙われたりすると洒落にならんけど」

「怪しい、人……捕まって、ほしい」

「一応、ヴァレンタイン皇国ほんごくにも世界図絵マップ・ア・ムンディの情報収集を依頼しといたわ」


 関わりのあったらしい誉田は俺が殺してしまったし、D班顧問の伊藤も事故死って発表があった。

 まぁ伊藤は口封じに殺されてそうだけど……残る手掛かりは手品師風の胡散臭い男『ヨッド』だけだ。


 強い人間を世界図絵に勧誘するのが目的らしいので、断った俺たちはいちおう対象外だ。

 それでもちょっかいかけてきたり報復されたりって可能性は否定できないのが辛いところである。


「大丈夫よ。マドカちゃんにも約束したし、まもってあげるから」

「……怪我、治す。けど、無茶、めっ……だよ?」


 当たり前のように俺と並んで戦おうとする二人に、思わず笑みが溢れた。


「そうだな。頼りにしてる」

「っ! 任せなさい!」

「が、んばる……ね!」


 俺たちにできることなんてそれほど多くはない。ましてや相手が秘密結社だか新興宗教だか、非合法な動きをするならば余計だ。


 死に物狂いで強くなる。


 そして。


「立ちはだかる奴はぶっとばす」


 俺の言葉にアーシャとヤイロは微笑みながら頷いた。




★あとがき★

ここまでお読みくださり本当にありがとうございました。

本作は参加中の「電撃の新文芸5周年記念コンテスト」要項に従い、更新を停止します。

1巻相当約12万字はいかがでしたでしょうか?

つたないところもあったかと思いますが楽しんでいただけていれば幸いです。

もし「面白かった」「続き読みたい」と思っていただけましたら評価の『小説のフォロー』や『★で称える』から★★★で応援していただきたいです。なにとぞよろしくお願いします。


最後になりますが、カクヨムコン直後の一ヶ月を走りきれたのは多くの読者様のお陰です。たくさんのフォローや評価、そして楽しんでくださっていることが伝わってくるようなレビュー・コメントにたくさん元気をもらいました。本当にありがとうございました。

今後もたくさん書いていく予定ですので応援よろしくお願いします。


吉武止少 拝

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

最弱召喚士の魔拳無双~俺だけ使える召喚獣装填と召喚獣育成で立ちはだかる奴は全部ぶっ飛ばす!~ 吉武 止少 @yoshitake0777

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画