魔剣のある世界



「早く俺も魔剣が欲しいなぁ〜。」


 そう呟いたのはまだ駆け出しの冒険者であるクロノである。

 この世界で冒険者になるということはほぼひとつの目的のためだと言えるだろう。

 それは魔剣を手に入れるというものだ。

 この世界において魔剣とは強さの象徴であり魔剣を完全に従えた者は一軍にも匹敵すると言われている。


 そしてクロノ少年もまた魔剣に魅入られた1人というわけだ。


――――――――――――――――――――


 (早く魔剣が欲しいのは欲しいけどそもそもダンジョンに行ける実力が俺は無いんだよなぁ〜。


 武器もただの銅剣だしな。しかも錆びてるし…。


 いくらギルドから支給されるものとはいえ錆びてるってどうなんだよ。

 そりゃ一応切れるっちゃ切れるけど錆びてるとなんかこう…怖いんだよね。

 とにかく魔剣を手に入れるためにもまずは最低限のお金を貯めてまともな剣を買うしかないよなぁ。)


 ということを考えながら今日も今日とてクロノ近くの森でスライムを倒し続けている。

 スライムと言っても想像するようなものではなくジェル状の液体の中に核があるような見た目だ。

 そしてその核を壊せばスライムを倒せる。

 スライムが死ぬと残るジェルを回収することで倒したことの証明と同時に素材の売却でお金も得られる。


 そしてクロノは錆びた銅剣じゃまともな敵とは戦えないと思いひたすらにスライムを倒し続けているというわけだ。


 今日も一日スライムを狩り続けたクロノは現在ギルドに向かっている途中であり、そろそろギルドのランクが上がるということで少しワクワクした気持ちでいるのだ。


 ところで、ギルドのランク制度についてなのだが、全7段階あり、

 ・駆け出し者が一定期間の間なる「アイアン」

 ・世間一般の冒険者認定となる「ブロンズ」

 ・ある程度のモンスターを倒せるようになると昇格となる「シルバー」

 ここまでは基本的に普通にしていれば誰でもなれるランクであり、これ以降のランクはギルドが決めた試験を突破し、なおかつその者の普段の行いが良くなければ上がれない仕組みとなっている。

 ここからは

「ゴールド」「プラチナ」「ミスリル」「オリハルコン」という順になっている。

 そして、ミスリル以上になるためには魔剣を手に入れることが明記はされていないものの隠し条件となっている。


 ランクをあげるメリットとして、ゴールド以上になると実力とともにその者の性格なども関わってくるため、個人依頼などが受けられるようになる。


 他にも様々なメリットがあるが今回はここまでにしておこう。


 ちなみに、クロノは現在アイアンであり、近々ブロンズになる予定だ。

 ブロンズになると貸し出されていた銅剣は購入しなければ返さなければならないため、クロノは早めに何かしらの得物を手に入れないといけないのだ。


 (貴族のボンボン達は羨ましいな。金にものを言わせて魔剣を手に入れるんだからさ。

 俺だってお金さえあればな。)


 そんなことを心の中で考えながらクロノはギルドへとたどり着いた。


 ギルドに入ると一番最初に目に入るであろうところにある受付にクロノは一目散に向かっていった。


「いらっしゃいクロノさん。」


 受付についたクロノに声をかけたのはギルドの受付嬢の1人であるブランである。


「ブランさん今日もよろしくお願いします!」


 そう言いながらクロノは今日手に入れたスライムの素材をブランに渡した。


「かしこまりました。いつものように素材の確認をするので少々お待ちくださいね〜。

 ところでクロノさんもそろそろ昇格の時期ですよね。そうなると武器とかも買わないといけないんですけど大丈夫なんですか?」


「そうなんですよね。生活するお金のことも考えると…足りないんですよ。」


 さすが受付嬢。クロノが困っていることを的確に言い当ててくる。


「やっぱりそうでしたか。このままいくとあと一週間ほどで昇格になると思いますのでなんとしてでも見つけてくださいね!

 もしギリギリになっても見つからなかったら私に声をかけてください!」


「ありがとうございます。ギリギリまで頑張ってみようと思います。」


「頑張ってくださいね。

 っと…スライムの確認が終わったようですね。

 では合計3800コルのお渡しです!

 ファイトですよクロノさん!」


「今日もありがとうございます!」


 そう言って報酬を受け取ったクロノは受付から少し離れたところにあるギルド併設の食事処へと向かっていった。


「いらっしゃいませ〜!」


 クロノは中に入るとウェイトレスが冒険者に負けない声量で出迎えた。

 ギルド併設ということもあり利用者のほとんどは冒険者なため声を張らないと負けてしまうのだ。


ウェイトレスの案内に従って席に着いたクロノはすぐにいつも頼んでいるクック鳥の丸焼きを頼んだ。


(やっぱこれなんだよなぁ。安いのにお腹にたまるから本当にありがたいね。)


 しばらくするとクロノの元に頼んだクック鳥の丸焼きが運ばれてきた。


「ありがとうございます。」


 クロノは早速クック鳥の丸焼きを食べ始めた。


 ちなみにクック鳥の名前の由来は捕らえるのが簡単な割に美味いし個体数も多いため料理用の鳥のような扱いなためにこう名付けられたと言われている。


 そんなこんなであっという間に食べ終わったクロノはお会計を済ませて現在の自宅である宿屋へと向かっていったのだった。


 ――――――――――――――――――――


 補足

 この世界のお金は1コルが10円というような感じになっている。

 また、基本的な物価は気持ち安めになっている。

 クロノが食べたクック鳥の丸焼きは50コルとなっている。


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