◆エルフの村

 キキとククが出会って、数年の時が流れた。幼い頃と変わらず、二人は本物の姉弟のように仲が良く、お互いを思いやって幸せに暮らしていた。


 ところが、それも長く続かなかった。

 突然、闇の魔法使いの軍団が襲いかかって来たのだ。


 闇の魔法使いといっても、今回は槍の歩兵ゴブリンと、斧の重戦士オークのみだが、油断はできない。向こうはこちらの何倍もの大人数で攻めてきているのだ。


「攻撃せよ!」


 ゴブリンの隊長の号令で、襲撃がはじまった。


「そうはさせるか! 行くぞ!」


 エルフたちも黙っておらず、槍で応戦した。


「わたしも戦うわ!」


 ククも小枝を片手に、魔法で戦う。

 エルフの槍攻撃で、蹴散らされるゴブリン軍団。だがすぐに、別のゴブリンが次々と現れ、執拗にエルフを攻撃する。

その隙にオークが背後から重い斧を振り下ろし、大打撃を喰らわす。


 命懸けで戦うエルフたち。

 しかし抵抗も虚しかった。雑魚とはいえ、相手は嘲笑うかのような、圧倒的人数。倒してもすぐに別の奴が来る。

少人数のこちらでは、とても歯が立たない。

 ゴブリンの集団攻撃。オークの斧のとどめ。エルフたちは次々と倒れていった。


「クク、お前はキキのところへ戻れ!」

「でも、村が……」

「ここは俺たちに任せろ! せめてお前だけでも、逃げてくれ!」


 残ったエルフもククを逃すと、一人残らず奴らに倒されてしまった。


「引き上げだ!」


 誰もいなくなったのを確認し、ゴブリンの隊長は命令した。ゴブリンとオークたちが撤収し、その場は誰もいなくなった。二人生き残った、キキとククを除いて。


 キキはというと、魔法が使えなかったため、巨大樹の根の陰に隠れてはただ戦いを見守ることしかできなかった。


「ぼくが、魔法を使えなかったから」


 根の陰から荒廃した村を見渡すと、キキは何もできない自分を責めた。


「そんなことない、悪いのはわたしよ」


 ククはキキをなぐさめつつ、まだまだ未熟な自分を責めた。彼女も根の陰から村全体を、険しい顔で見渡す。


「ぐずぐずしてられない。今からわたしは修行に出て、もっと強くなって……必ず奴らを倒す!」


 悔しい気持ちを切り替えて、ククは旅へ出る決意を固めた。


「キキは留守番してて。危ないから」

「ぼくも行く! クク一人じゃ危ないよ。何でもする!……できる限りのことはする! クク一人じゃできないこともあるし、ぼくにできることだってあるはず!」


 キキも真剣な顔だった。説得の結果、キキはククの旅に同行させてもらえることになった。

 身支度を済ませ、二人は滅んだ村を後にして、旅立った。

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