第17話:十年ぶりの裸の付き合いです
「聞きたいことは山ほどあるだろうけど、順番に説明するから、落ち着いて聞いてね」
宿屋の最高級のスイートルームで、俺はミキと二人きりになっていた。フィーナはもちろん、俺の仲間たちも警戒しているのだが、同じ世界からの来訪者同士ということで納得してくれた。彼女は鎧を外し、ゆったりしたワンピース姿でソファに腰掛けている。
「ああ、聞かせてくれ」
「まず、あんたは車に跳ねられた」
「それなら、うっすら覚えてる。……やっぱり死んじゃったのか?」
覚悟はしていたものの、いざ「自分の最期」を聞かされるとなると身構えてしまう。
「それがね、行方不明なのよ。監視カメラに映ってたから犯人はすぐ捕まったんだけど、肝心の被害者、つまりあんたの体が見つからなかったの」
俺はなんとなく納得した。おそらく、体ごと異世界に転移してしまったのだろう。
「警察も大掛かりに捜索したんだけど結局見つからないままだったわ。何者かに隠蔽されただとか、動物に食べられただとか、神隠しだとか。ワイドショーを賑わしたわね」
「みんなに、心配かけただろうな……」
両親や友達の顔が頭に浮かぶ。
「本当よ!」
そう叫ぶミキの目には涙があふれていた。
「それで、どうしてお前はここに?」
「ちょうど一週間目の夜だったかな。神社でお祈りしたの。もしもケンが帰ってくるなら、どんなことでもします、って」
少し照れくさそうに、しかしはっきりと言った。聞かされる方もこそばゆいが、それ以上に嬉しい。
「そうしたら、気づいたときには真っ白な世界にいて……」
「ゆるふわな女神様か?」
「あんたもそうだったの?」
そこからは話が早い。チート能力を授けられて、この世界に降ろされたというわけだ。
「で、お前の能力も俺と同じ脱衣なのか?」
「そんなわけないでしょ。あんな能力を授かる変態なんてあんたくらいよ」
「ひでえ」
だが、確かに俺はミキの使う
「もしかして、コピー系能力?」
「当たり!」
「マジかよ、チートもいいところじゃねえか」
ひと目見ただけで即座にコピーできるのだとしたら、一般的には最強クラスの能力である。
「制限も多いんだけどね。例えば消費MPっていうの? そういうのは本来の使い手よりも多くかかるみたい」
「なるほど。乱用はできないってわけだな」
「それにしてもケン、立派に成長したねぇ」
裸を思い出したのか、にやにやと笑いながら俺の体に目線を落としてくる。
「ま、まあ俺だってもう18歳だからな」
この世界でさんざん裸を見てきたが、いざ見られるとなるとやっぱり恥ずかしい。
「でもさ、私だけあんたの裸を見るっていうのも不公平じゃない?」
「ん、何が言いたいんだ?」
「……脱がしていいよ、私のこと」
「マジか……」
そう言ってミキはソファから立ち上がり、すべてを受け入れるかのように両手を広げた。
「どうしたの? フィーナは裸にしたのに、私は出来ないの?」
「そりゃ……リアルに知り合いだし……」
「私の裸なら見慣れてるくせに。一緒にお風呂に入ったりとか」
「そりゃ小学生の頃の話だろ! しかも3年生までだぞ」
特に夏場、外で遊んで汗をかいて帰ってくるとよくシャワーを浴びたりしていた。4年生になってからは、俺のほうが恥ずかしくなって別々に入るようになったのだ。今思うと惜しいことをした気がするが。
「ねえ、いいからやってみてよ。どんな感覚なのか、ちょっと気になるし」
そう言って目を輝かせる。確かに昔から好奇心の強い奴だった。未知の能力には興味があるのだろう。
「よーし、後で怒るなよ。……
閃光とともに、ミキの服が脱がされていく。ゆったりしたワンピースの下はキャミソール、その下にあるのは意外にも現代的なデザインのブラとパンティだった。当然、それもあっという間に脱がさていく。
「あー、やっぱり恥ずかしいかも。……あんたも脱いじゃえ、
フィーナと戦っていた後はわけがわからなかったが、今では不思議な力をはっきりと実感する。まるで、ミキの手で脱がされているようだ。そういえば小さい頃、よく着替えるのを手伝ってもらったことを思い出す。
「ケン、本当に良かった!」
裸になった俺に、ミキは飛びつくように抱きついてきた。小ぶりだが弾力のある胸の感触……だがそれ以上に、首筋に落ちてくる熱い涙の雫を感じた。
「ありがとう、生きていてくれて」
「俺の方こそ、助けに来てくれて本当にありがとな」
しばし、時間を忘れて抱き合っていた。
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