『続・落研ファイブっ』―俺がモブ男であいつが王子―
モモチカケル
頼む、夢であってくれ
エピソード0 スノボの王子様 殴られる(物理)
「父さん、俺をフレンチトーストで起こすのはやめろおおzzz」
ここはスノボ元全米・ワールドジュニアの二冠に輝いた男の聖域。
なんやかんやの末にスノボと決別し、落研に逃げ込んだはずがビーチサッカーをやる羽目になった
現在高校二年生の彼は、二学期の始業式を前にして父特製フレンチトーストの
「ほっぺぺちぺちすんなあああ。起きる。起きるからあ。フレンチトーストは、ほっぺぺちぺ――」
寝言をのたまいながら布団をはねのけようとした仏像の動きが、次の瞬間ぴたりと止まる。
「な、何じゃこりゃーーーーっ!」
仏像の布団が、メープルシロップがたっぷり掛かったフレンチトーストになっていた。
※※※
【ふとんが フレンチトーストに なった ▶たたかう にげる じゅもん どうぐ】
仏像の目の前に浮かぶコマンドには、この奇妙な状況を救う手立ては無さそうだ。
「だ、何で俺の布団が。で、出られねえ。べとべと。くっつく。父さん、マミー、誰か、助けてえええ」
フレンチトーストと化した布団にゴ〇ブリホイホイのごとく捕まった仏像。
仏像が逃げ出そうとあがいていると、ピアノの音色がどこからともなく聞こえはじめる。
「ま、松尾おおおおおっ、ピアノを弾いてる場合じゃねえええええ。たーすーけーろおおお」
落研の後輩にして天才ピアニスト・
「松尾、頼む。布団を、布団があああ。フレンチトーストにいいいい」
幼児のようにたどたどしい口調で助けを求める仏像に、
【うちには ぴあのはない ▶たたかう にげる じゅもん どうぐ】
ピアノの無い家から生ピアノが聞こえてくる違和感に仏像は瞳を動かす。
すると、ドレス姿で皿を片手にはしゃいでいる女達の姿が飛び込んで来た。
「
本来なら仏像を追いかけまわしてくるモブ女達だが、とにかくこのゴ〇ブリホイホイのようなフレンチトーストから脱出しなければどうにも出来ない。
「済みませーん、ちょっとあの(背に腹は代えられぬ。あのモブ女どもに助けを求めるしかねえ)」
だがしかし。
仏像が声を掛けようものならチョコのごとく溶けだすはずの女達は、仏像を完全無視である。
それどころか。
〔女A〕「きゃあああ、あの背の高い塩顔イケメンがロトエイト様だって」
〔女B〕「ロトエイト様ノーメイクでもお美しい♡ 本名が
〔女C〕「
〔女ABC〕「もはや伝説の『落研ファイブっ』。すっごーいよねええ」
すっごーい♡ 王子様が三人もーっ、とモブ女三名は頭の周りに花を散らかしている。
〔仏〕「えっ。
セミロングのゆるいウェーブヘアに隠れた耳をひく付かせながら、仏像は情報収集を試みる。
〔女A〕「みのちゃんさんが、『落研ファイブっ』の先輩なんだよね」
〔女B〕「みのちゃんさんの結婚式でピアノの王子様の生演奏が流れるのも、これが七回目だね。エモい」
〔女C〕「みのちゃんさんって
〔仏〕「高三の夏休みまでに『普通の彼女』が出来なかったシャモが。『お
話しながら近づいてきた女のパーティーバッグが顔にぶつかりそうになり、自分の目線のおかしさに仏像は改めて気づく。
〔仏〕「ちょっと待て恥ずかしい。俺はTシャツパンイチなんだよ」
いきなりフレンチトーストをめくりかける女に猛抗議すると。
〔女A〕「あー、やっぱこっちかな」
女は仏像の頭をパーティーバッグでぶん殴って、視界の外に去っていった。
※本作はいかなる実在の団体個人とも一切関係の無いフィクションです。
※本作は『落研ファイブっ―何で俺らがサッカーを?!』の続編です。こちらを合わせて読まれることをお勧めいたします。→
https://kakuyomu.jp/works/16817330659394138107/episodes/16817330659394756389
※一部加筆修正いたしました(2024 4/1)
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