1作目再編集予定

タチバナカオル

第1話 生まれながらの勝ち組の挫折

 私は3代帝大の父と練馬の地主の母に生まれた。しかし幼稚園のころに離婚、母の理再婚、愛人問題などで、グレてみた。


 でもシンナーは健康に良くないので売るだけにして、美術館にいったり、米軍跡地の光が丘公園でヒルネをしたりしていた。


 酒はよく飲んだ。味が分かる年ではない。酔うことが好きだった。

 ビールを一気飲みして自転車を漕いだりした。酔いを回すためだ。バカですね。


 同時にTSUTAYAで見つけた違法薬物の一覧本を立ち読みした。種類はそう多くなかったので買わずにだいたい覚えた。これはその後、役にたった。


 高校3年、私は都内の中高一貫の男子校に行っていた。


 2年から3年に上がるとき親友が学校を去った。彼はボートのレーサーになると言っていたがいっこうにその学校には行かずだらだら朝からパチンコをしていた。うらやましい。


 私はその1年まえくらいに池袋の西武百貨店の当時のロフトの本屋で衝撃的な出会いがあった。「ホテルアジアの眠れない夜」、蔵前仁一のコミカルな絵と文の文庫本だ。


 人生ではここで出会わなければいけないモノ、ヒトがいる。


 私は英語のグラマー、リーダーは10段階で3、4だったが、英会話は9とかだった。中学校のとき夏休みほぼ全部アメリカでホームステイしたのが自信になった。話せば通じるのだ。


 アメリカの反対が見たいと思った。


 インド。


「ホテルアジアの眠れない夜」に続いて、「ゴーゴー・インド」、「ゴーゴー・アフリカ」なども読んでいたので、アメリカの正反対の国が見たいと思った。


 それでインド。


 インドの旅は良かったか。


 行って良かった。色んなヒトを敵に回すが、私はもう行かない。

 少なくとも私の美の基準で汚すぎる。


 それまでなんの興味もなかった帰りのトランジットのタイでクラッシュドアイスのスイカジュースを蠅のいないテラスで飲んでタイが気に入った。


 実は行きも思い起こせば、1泊だけだったが夜のバンコクで空港から出た瞬間の空気のにおいに異質な文化を感じた。果物の腐ったような、それでも不快でない南国の空気。


 はじめはマカオで擦って日本へ帰り損ねそうになったり、タイの安い銀のアクセサリーを新宿のフリーマーケットで売ってみたり、ドタバタしていたが、練馬の不良を取り仕切っていたころの感覚とTSUTAYAで覚えた薬物の知識で、バンコクのカオサンロードというところでそこそこ自由に振る舞えるようになった。


 カオサンロードというのは安宿街だが、ドラッグの街としても有名だ。バンコクの安宿街はほかに中華街がありこちらはオンナが有名。中華街のほうが長期滞在者が多い。


 私はタイ語を覚えるのが早かった。それが強みだ。英語の成功体験があるからとにかくしゃべる。1、2カ月で日常会話、それから少しして通訳いらずでビジネスができた。


 私の仕事は仲卸を見つけて直接日本人に売るという、とても利幅が大きいモノだった。小売りが文句を言わないのは私が扱うのが特別だからだ。彼らが恐れて扱わないモノを私は短期で売ってまたしばらくじっとする、というのを繰り返した。


 バカみたいにカネが儲かった。じっとする、というのはビジネスの話で、毎夜クラブへ行った。ゴーゴーバーなど行かない。スパソ、Qバー、シェラトンに入っていたリバース。サービス料はかかるが、「チップ、チップ」と下品で不細工な女しかいないゴーゴーよりクラブのがいい。ゴーゴーバーでも外国人が知らない「スティサン」などに行った。そこでは食事をして給仕にチップをやり1時間くらいかけて女を選ぶ。女もチップなど求めないし、静かな空間だ。客は金を持っているタイ人と事情通の外国人だけ。


 半年で向こう数年は節約すればバックパッカーで世界旅行できそうな金額になった。そろそろ潮時だな、と思っていたら案の定こういうタイミングで中国人が怒っているとの通達があった。


 言い忘れていたが00年代なのでスマホはない。ホテルの電話が一番信用できた時代だ。


 チャイニーズの言い分はカオサンのこの半年の売り上げが激減していた。調べたらノブアキ、私、がカンボジア産を売っている。協定違反だ。


 バレないように日本人と白人少しだけに売っていたのだが、噂が広まり、また私もこれから世界旅行に行くのにATMの残高が幾何級数的に増えるので手を広げすぎた。


 さぁ、どうする。

 

 

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