ストレスを感じすぎた社畜くんが、急におもらししちゃう話

こじらせた処女/ハヅ

第1話

「うそ、なんで、」

じっとりとした感触で目が覚めた。温かいはずの布団はひんやりと冷たく、尻に着衣物が纏わり付いている。

「と、とりあえずあらって、」

シーツを剥がすとマットレスまで染みてしまっている。

 震える手でスマホを操作して、処理の方法を調べるけれど、お酢だの重曹だの、分かんなくてとりあえず放置して、掛け布団を持ってシーツだけ持って洗面台に急いだ。

「あれ健、なにしてんの?会社遅れるよ?」

何で、起きてるんだよ。今は朝の7時。平日の朝なら起きていてもおかしくない時間帯だけど、今目の前であくびをしている男はフリーランスで完全にリモート。時間に縛られない彼は早くても起きるのは朝の10時ぐらい。この時間帯には滅多に起きてこないのに、何で、今日に限って。

「あ、えっと、」

「あー、そういうことね」

色濃くなったグレーのスウェットで軽々と察される。恥ずかしくて、顔まで熱い。

「疲れてたんだよ。最近ずっと終電帰りだったじゃん。俺やっとくから会社の準備しな?」

「いや、いい、自分でやる」

「でも朝ごはん食べる時間なくなるよ?」

「いらない…」

「昨日もそうやって食べずに寝たよね?」

「ごめん、作ってくれたのに」

「そーじゃなくて…クマも酷いし、フラフラしてるし、今にも倒れそうだよ?」

「大丈夫だから…」

「でも…今日休むことって出来ないの?」

「うるっせえな!!無理に決まってんだろ!!」

心配してくれてるってわかってるのに、イライラが止まらない。

「お前はいいよな!!ずっと家で、休みたい時に休めて!!」

「何それバカにしてる?」

「あ…」

やばい、まずった。そう思った時にはもう遅い。

「もーいいよ。そんな風に言うんだったら。自分で勝手にしたら?」

完全に俺が悪い。せっかく手伝ってくれようとしたのに。家事すらまともにせず、助けてくれようとした手を振りはらって。あいつだって疲れているのに。



「っはぁー…」

朝なのに覚醒しきって疲れ切った目元を揉み込む。

 最近、体がおかしい。終電帰りでクタクタなのに眠れなかったり、ご飯を見るだけでお腹いっぱいになって食べれなかったり。ずっと重りがついたみたいに体が重くて、しんどい。そこそこいい大学を出て、将来は安泰だと思っていたのに。残業代なんてないに等しい。ブラックにも程がある。有給なんて名ばかりで休ませても貰えない。この前、熱があったにも関わらず、休ませてもらえずにオフィスで吐いた奴も居たっけ。あんな重症を患っていた奴でさえ休めなかったんだから、俺が休もうものなら次の日席がなくなるだろう。

「これどうしよう…」

水洗いまで済んだシーツ。これでちゃんと洗えているのだろうか。もんもんとしたまま時間だけが過ぎる。

「あ…ちこく…」

慌てて時計を見ると、もう家を出る10分前。どうすればいいか分かんなくて、部屋の椅子に適当に干して部屋を出た。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る