なんか色々足りない桃太郎

豆腐数

きび団子も足りない

 海の上の釣り船に、大柄な成人男性くらいの鬼と、白いフカフカの垂れ耳犬、そして澄んだ瞳の少年が乗っていました。


「ねえシロ、『海に船を浮かべてそこに桃から生まれた少年と鬼と犬を乗せたら桃太郎が始まる』って聞いた気がするんだけど、全然始まらないよ!」

「始まるわけないワン! まずキジと猿が足りないワン!」

「僕らのお家は海の近くだから猿の友達はいないし、鳥の友達もカモメさんくらいしかいないよ!」


 少年の返答に合わせて、三人の船の上をたくさんのカモメさんの友達が旋回して「こんにちはー!クエックエッ」と鳴いて去っていきました。作者がカモメの鳴き声をド忘れして、チョコボールのキャラみたいな鳴き声になりましたが、些細な事でしょう。


「大体梅太郎も梅の実から生まれたから梅太郎で、桃から生まれた少年じゃないワン!」

「えへ、そうだった! 夏の暑い日にお庭の梅の実が落っこちて割れて、瀕死の手のひらサイズで生まれてそれ見たおばあちゃんが腰を抜かしかけたのが僕だった!」


 梅と桃は親戚みたいな植物ですが、色々と違います。生の梅の実はとてもおいしそうな匂いがしますが、桃と違ってそのままでは食べられません。梅干しや梅酒などで頂くのが一般的ですね。


「そもそも鬼は一緒に船に乗るんじゃないワン! 鬼々島にいて桃太郎と戦って退治されるんだワン!」

「ええーっ!退治なんてしないよ! 鬼くんはお友達だもん」

「んだ」


 鬼くんは口数少なめに、しかしどっしりと頷きました。


「でももうおじいちゃんにお願いして船借りて来ちゃったよ、どうしよう」

「んだ」

「普通に釣りして帰ればいいワン」


 三人で協力しての釣りは大漁を呼び、梅太郎は金銀財宝のようにウロコの輝くお魚をたくさん抱えて、おじいさんとおばあさんの元へお友の犬と鬼と帰っていきましたとさ。


 その日の夕食は、犬と鬼も同伴し、お刺身に焼き魚にお魚の唐揚げと、大変豪勢だったそうです。


 めでたしめでたし。

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