辺境の村  プロローグ こうして僕(私)は出会った

第0話 一つの物語が終わるときに

「臆するな!人類の勝利は後少しだ!」


 その声が背中に響き渡る。戦場の悲鳴、そして怒号。目の前に広がるのは地獄の光景。仲間たちが命をかけて戦う中、僕はただ立ち尽くすしかない。


「カイト補佐官、何ボーっとしている!隊長の援護をしろ!」


 無線からの声が僕の耳に届く。その言葉に身体が反応する前に、僕は戦場の現実に押し潰されそうになる。しかし、僕は決意を固め、刀を握りしめる。


「…っ! すまない!」


読込リロード 剣士ブレイバー


 右手にはめている手袋がほつれ、繊維が刀の形を作る。


 無線に従い、周囲の混沌の中へと飛び込む。

 その途中、化け物に馬乗りになっている隊員を見つける。


鎌鼬かまいたち


 刀に振るだけで出る僕の斬撃は、一瞬のうちに化け物を肉塊にする。その血濡れた姿が、僕の心を冷たくする。


「助かりました、補佐官」


 血に染まった隊員が僕に感謝を伝える。しかし、この戦いはまだ終わらない。


破壊者デストロイ


 刀がショットガンに変わる。

 敵が迫る中、僕はショットガンで次々倒しながら進む。


「カイト! 早く来い」


 最前線からの声に注目をする、そこでは隊長のルインが大勢の怪物に対して大剣で相手をしていた。


急いで僕も加勢する。


「ルイン! 君はこの作戦の要だ、これ以上の消耗は避けてくれ」


「消耗か……だが隊員がいる俺だけが引くわけにはいかない」


「しかし!」


敵の進攻は止まる見込みが見当たらない、これではジリ貧になってしまう。


「ヴッ」


カイトが腕を痛めるような仕草をした、そろそろ限界が近いようだ。


「ルイン! これで戦闘何時間目だ!」


「……2……ぐらいかな」


二時間の連続戦闘は僕らの装備とは相性が悪い、退かせるべきだ。


「……すまないが撤退してくれ、犠牲は増やすものでは……


 僕の言葉が言い終わる前に、周囲の隊員たちが呆然と立ち尽くしていることに気付く。その先に、ビルのように巨大な化け物が姿を現す。


「は?…」


 その化け物が徐々に膨らみ、体積を大きくしていく。


「総員退避!」


その命令が全員に届く前に化け物が破裂する、周りにいた大群を巻き込んだ自爆、その衝撃波が僕たちを襲う。

ショットガンを杖に変化させる。


『我が身を包みし、堅牢なる結界よ、その力を今示せ 金剛石の守りプロリテント


 防護壁を展開するが、ギリギリ間に合わない。衝撃波に防護壁が耐えられない、しかし僕は生命を代償にしてでも僕はみんなを守らなくてはならない。


「耐えろ!!!」


 意識が薄れていく中、ルインが僕の杖をつかむ。


促進アクセレーション


 僕の杖に、彼は力を流し込む。


「ルイン! 手を離せ、君では持たない!」


「……カイト…俺は……」


彼が最後まで言い終わる前にさらに大きな衝撃波が飛んでくる。

……防護壁が割れた。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――





 僕は目を覚ます、目の前にはルインが倒れていた。彼の体は傷だらけで、血が大量に流れていたが、まだ息はしている。


「ルイン!」


 僕は声を上げ、彼の元に駆け寄る。ルインは微笑みながら、血の中から言葉を紡ぎます。


「カイト……これが


 その言葉がカイトの心に深く響く。脳がこの事実を認めたくないと言ってくる。


「医療班、いないのか!誰かいないのか!誰でもいい、だれかルインを!」


 辺りは先ほどの衝撃で今まともに動ける隊員はいない、頭がくらっとする、声を出しすぎた。


「ルイン…置いてかないでくれ…頼む……」


僕の目の前は再び真っ暗になった。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「……ト……イト…カイト、起きろ!」


「ふぇっ!」


誰かに起こされる、目の前にいるのはあの時生死を彷徨っていた戦友……

ではなく、上官のおじさん。


「これからお前の勲章の授与だぞ、しっかりしろぉ」


「す、すみません!」


あの出来事から3カ月はすべて終わった、化け物が世界を蹂躙していた世界は終わり、人類はまた安心して生活をできる世界が戻ってきた、……多くの犠牲と傷を残して。


「ヒイラギ・カイト2番隊隊長!」


「はい!」


僕の名前が呼ばれる。


手渡された勲章、それは本来僕につける資格などないものだ、これはルインがつけるはずだった勲章。

それをもらい僕は何も言うことのできない感情を感じた。






勲章授与式が終わり、授与者はパーティーに参加するところを欠席し、行くべきと感じた場所に行く。


そこは墓場、戦友の新たな家、小さくなってしまった彼の家は、周りに同じものが多く、特別感なんてものはなかった。


「終わったよ、全部……」


もらった勲章を墓の前に置く、……僕には……似合わないから。


「……ごめんだけど、僕は逃げるよ」


持ってきた酒を墓にかけながら返事のない会話を続ける。

……そういえば、まだ君はまだお酒を飲んだことなかったな。


「でもさ、君の分まで生きるよ、簡単には死なないさ、先にまってくれ」


ありがとう、今はただ、それだけを。







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