第13話 幕間『妖精の憂い事』


「魔法少女、やってみない?」


ふと自分が魔法少女になった日のことを思い出す。今はソラこと桜井小春とスイカこと青井千夏の二人とともに私、菊地原椛ことサクヤは特訓している。つい先日ソラは初めての敗北を味わった。敵であるインベーターも逃げっぱなしではなく順調に力をつけているということだ。小春は学級委員長を務め成績もスポーツも万能でおまけに魔力も多いいうえに驕らず努力を続けるタイプの天才だ。千夏も魔力量は劣るけれど小春と勉強とスポーツでしのぎを削る仲だ。それに対して私は強みがない。勉強も成績も普通、かといって魔力もそんなに多いわけじゃない。時々、私は何のために魔法少女をやってるのか分からなくなる。私なんかがいなくても大して変わらないだろう。はっきり言って足手まといだ。でもだからこそインベーターに対して地面を這いつくばろうとも絶対に負けたくないという気持ちが沸き上がる。でも彼女達みたく新しい技を生みだすためにとてつもない努力ができるわけじゃない。所詮ただの中学一年生だ。才能で圧倒されると気力を失う。


「魔法少女になってよかったのかな」


思わずポツリと言葉が漏れる。だが答えは一生かかっても分からないだろう。そういうものなのだ。私は彼女らのためにもう一度立ち上がる。

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