なぜか知らないけど魔法少女と戦うことになりました

すかーれっと

第1話 魔法少女になりました

学校帰りの午後四時四十五分、世界を変える声がした。


「魔法少女に興味はあるかい?」


私ははじめ、幻聴の類だと考えた。周りに見えるのは農業に勤しむおじさんか、私と同じ学生か、その2種だけだ。しかもかなり離れている。今の声は耳元で聞こえた。私は最近疲れている。幻聴が聞こえたところで今更驚かない。そう思ったのだが、私は応えなければと行動した。


「ないといえば嘘になる」


実際興味がないわけではない。なりたいかといわれると微妙である。


「それは同意と受け取るよ」


返答をミスしたかもしれない。私の影が正しくない方向に延びる。まるでこの陰について来いとでも言われているようだ。帰路でもあるから影と同じ方向に進む。途中まで歩いて影は正しい方向を向いた。いや正しい方向に何かあるのだ。見なくてもわかる、謎の祠だ。私の通学路には謎の祠的なのがある。高さ5メートルもない小山の上にある何を祭ってるのかわからない祠。帰りに寄り道するのはよくないがこの程度なら良いだろう。そう思って私は先へ進んだ。


「来てくれてありがとう。早速だが君に仕事してもらいたい。」


祠の中から何かが声を出す。黒い何か。その見た目の不定形さからスライムみたいなものを想像したが出てきたのは蛇だった。黒蛇、何か良からぬことが起きる気がする。


「仕事って?それにあなたは何者ですか?」


純粋な疑問だ。それくらい答えて欲しいものだ。そう聞いたのも束の間、私の目の前に魔法陣が展開される。これは変身する流れだな。魔法陣が私を包む。


「ふむ、名前を聞くなら君からお願いしたい」

「あー、私の名前は本好典(もとよしつかさ)です」

「私はノワール、君に頼みたい仕事は侵略者の駆除だ。」

「何故わたしに?」

「そこを通ったから」


とんでもない理由だ。そしてやることが侵略者駆除なんだが気乗りしない。私の格好をいま一度確認するとただの学ランから、セーラー服の上にカーディガンを着る地味目な女の子になっていた。違和感が大きい。


「ちょうどもうすぐここに現れるはずだ。戦うよ?」

「戦い方なんて知らないですけど?」

「君のその姿なら大丈夫。魔法が使えるよ、君に合った魔法がね。」


目の前に黒い水の塊が現れる。そこから言葉では表せられないような怪物が出てきた。


「今からこれと戦えっていうんですかぁ」

「すぐに実践でごめんね。どう勧誘するべきか迷っちゃって。もし魔法を使えないのなら手に力を込める感じで殴ればいい。魔力の純粋集中ってやつさ。」


言われた通り手に力を込める感じで殴る。あっけなく倒せた。勝利は一瞬だった。


「さて…次が来るよ」


まだ戦うのかそう思っていたら新しい魔法少女が現れた。増援だ。私は体を引っ張られた。自分がいたところの地面が燃えている。


「次の敵は魔法少女だ。さて死なないように気を付けてくれたまえ」

「侵略者インベーダーたち今日も懲りずに世界征服に勤しんでるね。そんなの魔法少女マジカルフェアリーずが許さないんだから!」


複数形で語るが魔法少女は一人しかいない。


「我々はそんなことしないというのにほんとに聞かない子だね。今日はいつも使ってる生物兵器じゃなくて仲間になった魔法少女なんだけどね。」


攻撃してきた魔法少女は燃えている。


「彼女の名前はソラ。見ての通り炎を扱う魔法少女だ。我々のことを敵だと誤認している。彼女に対侵略者用生物兵器を壊されて困っていたんだ。だから君に魔法少女をお願いした。攻撃が来るよ、受けるところに魔力を込めて。」


言われた通り力を入れる。感覚で攻撃を受ける。とても痛い。もし力を入れてなかったら?恐ろしい。私はその場に倒れこむ。


「君には少し早かったみたいだ。いったん引いて体勢を立て直そう。」


ノワールの尾の先が水たまりのように広がる。私は飲み込まれた。

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