第7話(中学生視点)

背中を何度か叩かれて、無意識に体が跳ねる。

「ぁ…ごめ、なさい、ごめん、なさいっ、」

(中学生なのにっ、なったのにっ、全部出しちゃったっ、)

「ッヒグ、ぅ゛~…」

手を離すと、ばだばだと溜まっていた水が落ちていく。新しい制服も、失敗でぐしょぐしょだ。

「ほら、風邪ひくからおいで」

腰に手を当てられて、お風呂場に連れて行かれる。

「洗濯してやるから脱げ」

「でもっ、せいふくっ、」

「大丈夫大丈夫。ベルト外すぞ?」

何も汚れていない綺麗な手で、唯一被害のなかったベルトが外されていく。

「とれた。あとはできるか?」

「できる…」

ズルッとパンツごとそれらを下ろす。黄色く染まった白い布。

「よくできました」

お兄さんからは僕はどれほど幼く見えているのだろうか。まあ、お漏らししちゃったんだから仕方ないか…

「上はちょっと袖先濡れてるな。俺が脱がすな?」

手をタオルで拭われて、肩の襟から腕を抜き取られる。

「シャツは大丈夫だけど…まあ一緒に洗っちゃうか。脱いじゃってー」

こんな何の関わりもない隣の人間に、なんでこんなに優しくしてくれるんだろう。顔もすっごくかっこいい。女の人にもモテるんだろうな…



「あがり、ました…」

「あー、やっぱりぶかぶかか。まあ隣だし良いだろ」

膝を隠すぐらい長いTシャツ。肩がずり落ちて、何度も何度もずり上げる。

「髪まだ濡れてる。タオル借りるな?」

わしゃわしゃと犬にするみたいに激しく頭をかき回される。人にされるのってきもちいい。

「よし完成。一応洗っといた。あとは部屋干ししとけ」

「ありがとう、ございます。服っていつ返しにいけば良いですか?」

「ん?ああ、いーよいーよ。持っといて。そんな高いもんでもないし」

「そんなっ、でもわるいです、」

「って言っても俺結構不規則だからなぁ…まあ土曜日の昼間はいつでもいるし、気が向いたら返してくれ」

「っはい、ありがとうございました」

行方不明の鍵は数学の教科書の間に挟まっていて。僕は無事に家に帰り、何事もなかったかのように制服をハンガーにかけたのであった。

「お礼、何持っていこう」

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エレベーターで一緒になった男の子がやけにモジモジしてるので こじらせた処女/ハヅ @hadukoji

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