エピローグ

 ひと月が過ぎた頃、

警視庁に釧路警察署の乾実警部が挨拶に来たと言って、警視庁の万十川建造課長が部下の六日市圭司警部のほか、

丘頭桃子浅草警察署警部、

飯沼武雄中野警察署警部、

大磯拓也品川警察署警部、

有村陽子大塚警察署警部

を一心の探偵事務所に連れてきた。

退院祝いと打ち上げの会をやろうと言うのだ。

浅草の仲見世通りでおでんや団子、饅頭にせんべいなど一貫性のない大量のおやつを買って来た。

 静と数馬と一助でコーヒーを淹れて一心と美紗が取り敢えずの接待係をする羽目になった。

「今回のような大事件が無事に解決できたのは皆さんのご協力の……」

課長の長い挨拶を聞き流しながらすでにみんなの口はもごもごとしている。

話が終わると、コーヒーで乾杯をした。

結局逮捕したのは赤井川沙希と桂慎一郎だけだった。山笠颯太も赤井川創語も死んでしまった。

心美は赤井川の家で沙希を待つと言う。

わいわいやってる中丘頭警部が一心の耳元で、

「あんた、沙希を見逃そうとしたのね。そして創語は沙希を命を懸けて庇おうとしたのよね」

鋭い目を向けられて、一心は「まあ、良いじゃないか。じゃなと心美ちゃん可哀そうだなと思ってさ」

「私は気が付いていないから良いけどさ」ふたりで笑っていると、

課長がでかい声で「まぁ心美ちゃんの為に、赤井川創語には罪を背負ったまま死んでもらったってことにしたかったが、警察は間違っちゃいけないんだよな。ははは」と笑った。

みんな頷いているところをみると分かってたんだ。

そう思うと一心は嬉しくなって、静を抱きしめた。

その代わりに一心の潤んだ目の周りに青たんができたが、嬉しかった。

誰かが

「そう言えば赤井川創語が最後に書いた《ミステリー作家のミステリーな殺人事件》のラストはどうなってんでしょうかね?」

「そりゃ当然、ラストは全部告白して自殺したに決まってんじゃないの! 詳しく知りたかったら本買って読むのね!」丘頭警部が軽くあしらう。

「その本何でもバカ売れしてるらしいぞ。販売開始前から予約が殺到してるって根田さんが言ってた」

一心が言うと、

「今回、出版界の中のドロドロした人間関係を知った訳だが、それはそこだけじゃなくて、芸能界だって、政界だって、一般企業にだってある。

世間にだって最近はドロドロした人間関係が起す事件が多過ぎだと思わないか? なんか世に中狂ってるよなぁ……」

そう万十川課長が締めた。

「課長! かっこ良く締めた積りだろうが、結局、母親が娘を守るために次々と罪を重ねたって悲しい話じゃないの? 周囲はドロドロかも知れんがよ」ケチをつけ課長をムッとさせる一心だった。

「はははっ」周囲に遠慮のない笑いが巻き上がった……。

 

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狂気の行方 闇の烏龍茶 @sino19530509

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