第18話 デート①

 翌日、ラースは目を覚ますと昨日選んだ服に身を包む。

一通りの準備を終えると、お屋敷の庭へと向かった。


 そこには、フェンリルの子供のシロを撫でているクレインの姿があった。

辺境伯のお屋敷で飼ううちに、クレインや辺境伯様にも懐いてくれたのだ。


 神獣がここまで気を許すのは珍しいので、ラースも感心していた。

神獣というのは、人の心を読むとも言われている。

よって、清らかな心を持っていないと、神獣は懐いてくれない。


「クレインさん、お待たせしました」

「いえ、私も今来た所ですからお気になさらず」

「今日は、メガネなんですね」


 今日のクレインは白シャツにベスト、いつもはかけていないメガネをかけていた。

いつもの貴族らしい服装も似合うが、イケメンというのは何を着ても似合ってしまうらしい。


「一応、目立つとよくないと思いまして」


 領主の長男なので、顔は領内に知られているのだ。


「確かに、そうですね」

「ラースさんも似合ってますよ。とても可愛いです」

「その、ありがとうございいます」


 クレインには今までほとんど白衣姿しか見せていなかった。

私服を褒められると照れくさくなる。


「では、参りましょうか」

「はい!」


 クレインと共に、お屋敷を出る。

並んで歩いていて気づいたのだが、クレインはラースに歩幅を合わせてくれている。

そんな気遣いが嬉しかった。


「シロと随分仲良くなったんですね」

「今までペットを飼ったことなどなかったので、可愛くて」

「これからも可愛がってあげてください」


 初めて飼ったペットが神獣というのもおかしな話ではあるのだが、それはもういいだろう。


「行きたいお店はどこかありましたか?」

「はい、中央街の方に美味しいお菓子と紅茶を出すお店があるって聞いて」

「ああ、ミヌエットですね。確かにあそこは美味しいですよ。まずはそこに行きましょうか」

「お願いします」


 クレインと一緒に領内を歩いて目的のお店へと向かう。


「ここですよ」


 数分歩いて到着した。


 白を基調とした店内はすごくおしゃれに纏まっている。

お客さんも女性とカップルがほとんどである。


 ラースたちはテラス席へと座った。


「すみません。テラス席しかなくて。寒くないですか?」

「私は大丈夫ですから、お気になさらず」

「ありがとうございます。じゃあ、頼みましょうか。お昼、まだですよね?」

「ええ、そうですね」


 ラースは朝食を軽く食べただけだった。


「じゃあ、軽く昼食も頼みましょうか。ここはサラダとサンドイッチも美味しいですよ」

「任せてもいいですか?」

「もちろん」


 クレインは店員さんを呼ぶと、注文を済ませてくれた。


「慣れていらっしゃるんですね」

「まあ、お忍びで街に出るのが好きでして。父上には止められるんですがね」


 そう言った、クレインの顔はまるで少年であった。

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