第22話:雪人の野望



 アカネに懇願おねだりされて作った、アカネ用の『上げ底物体オブジェクト


 それをアカネの実母・美里に見せたらば。


「わたしのも作ってっ!」


 と。


 追加の懇願おねだり


 側がアカネよりも少しため、採寸もして、正面と左右、それに斜めからの写真撮影も行って。


「あ、いや、アカネのは見慣れてるけど、美里ママのはさすがに見慣れてないからね」


 と、雪人の弁。


「変な事に使わないでね?」


 美里に一応、釘をさされるも、もちろん雪人にそんな意図は全く無く。


「まぁ、お母さんのじゃ、ねぇ。そんなの使わなくても、わたしが居るしー」


 とのアカネの弁に。


 ゴツン、と。


「いたっ! 何よぉっ! お母さん、ひどーいっ!」


 美里の縦チョップがアカネの頭に落下。



 そうして、美里のデータを持って、制作の準備をしつつも、アカネ用の物体オブジェクトも、、着色と作業を進め。


「やっぱり、色が着くとそれっぽくなるねー」


 完成した物体オブジェクトを手に、アカネもほくほく。


「でもやっぱり……」


 不満な点が残っている。


「サメ肌ぁ~」


 ラッカー系の着色料の硬化による効果によって、表面の手触りが、どうしてもザラザラになってしまう。


「最終的には素材……低反発ウレタンそのものを着色して、金型も作って量産できるようになれば……」


「おや? 旦那様? もしかして、商売? 考えてる?」


「うん、まぁ……」


 雪人の考え。


 

 ネットで調べてみたところ。


 女装男子のニーズは、そこそこあって。


 実は、雪人が自作した物体オブジェクトに類似した商品も販売されている。


 それも、いくつもの種類がある。


 それぞれ、用途によってそれぞれ特徴があり、もちろん、金額も様々。


 コスプレ的なお遊び要素もあるが『LGBTQ+』の要素もあり。


 また、女装男子のみならず、女性にも必要な場合があるため。


 そういった商品が様々、販売されている、と。



 さすがに、それぞれを実際に購入して調査、までは行っていないが。


 高校を卒業して、情報処理系の専門学校に通いながらアルバイトをしつつ、そういった研究もしたいな、とは。


 思いながらも、今は。


 今、簡単にでも、自分でやれることを、と。


「さあて、じゃあ、美里ママ用の、作るとしますか」


「おぉー」


 アカネの声援を受け、美里用の物体オブジェクトの制作にとりかかる。


 とは言っても、制作工程は従来とほぼ、同じ。


 異なるのは、内側の、身体に触れる部分の造形。


 実際に測定した美里の身体の寸法サイズと、撮影して保存してある写真を見比べながら。


 ノギスで寸法を確認しつつ、掘り込んでゆくと。


 脇で見ていたアカネが申す。


「それがお母さんかぁ……むふっ」


 何が言いたいのか?


 やっぱりわたしより、と、思っているのだろう。


 気付いた雪人は。


「また、美里ママにチョップ喰らう、よ?」

「あははははー」


「あ」

「ん? どうかした?」


 何かを思いつく雪人。


「これで素材が無くなったな……また買いに行かねば……」

「やったー、ホムセンデートだぁ~」


 仲良し夫婦(仮)


 仲良く。


 作業は。



 つづく。





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