第21話:変形・合体するブラの構造



 母・雪枝を模したアカネ用の物体オブジェクト


 まだの取り付けや着色が残ってはいるものの。


 その土台となる部分がほぼ、完成。


 アカネが装着してその着け心地や効果を確認。


「おぉ……これが雪枝ママの……」


 雪枝から借りたブラも装着して。


「ってゆーか、ブラがキツいんだけど……なんで?」


「あぁ……アンダーが合ってないんだね。お母さん、意外と細いからなぁ……」


 背丈は家族随一で、トップのサイズもトップの雪枝だが。


「ちょっと、これ、着けてみて」


 と、雪人がアカネに渡した、少し大きめの絆創膏のようなモノ。


「何、これ?」

「ブラのエクステンダーだよ」

「えくすてんだー?」

「ブラのアンダーサイズを延長するホック」


 よく見てみると。


 ブラのホック側の先端の『引っ掛ける方』と『引っかかる方』その両方が付いた小さな『部品』のようなもの。


「あー、これをホックの間に挟んで広げるのかー」

「そうそう、そんな感じ」


 一度上着を脱いで、ブラジャーも外して、エクステンダーを取り付けてから再度ブラを装着。


「おー、これなららくら……らくらく……?」

「ん? どうかした?」

「いや、なんだろう、この違和感……」

「あ」


 雪人が何か気付く。


「あぁ、ホックの位置が変わったから、ストラップの位置もズレてちょっと外側になってるからだね」


「ああ、なるほど、確かに……ストラップがズレ落ちそう……」


「えぇっと……このブラならストラップが外せるから、こうやって……」


 雪人がアカネの背後に回ってブラジャーのストラップに取り付けられているストラップを外して、左右を入れ替える。


「左右を逆にしてクロスすればズレなくていいよ」

「おぉ……こんな事ができるんだ……」

「ストラップが着脱式のタイプじゃないとできないけどね」


 女のアカネより、男の雪人の方がブラジャーの構造に詳しくなっている点については、そっと触れずに置いておくとして。


 とりあえず。


 雪枝を模した物体オブジェクトの上から雪枝のブラジャーを装着。その上からキャミソールを着て、さらにブラウスを……。


「う……」


 ブラウスのボタンが、ぱっつんぱっつんに。


「ブラウスとかも借りないとダメかも……」

「とりあえずスウェットならいけるんじゃない?」


 ブラウスを脱いで、スウェットに交換。


 姿見に映して前から横から斜めから、手を広げたり、上体を反らしたりして動きも確認。


「うんうん、これなら何とか」

「う……なんか……すごい、ね……アカネじゃないみたい」

「んふーっ。よーし、ちょうど晩御飯だし、お母さん達にも見せよう~」


 と、部屋を出ようとドアを開けたアカネが。


「げふっ!」


 ドアの前で悲鳴を上げる。


「どうしたの? 大丈夫」


 心配して駆け寄る雪人にアカネが状況を告げる。


物体オブジェクトが開けたドアにぶつかった……」


「あー……慣れないと目測謝るよね。ボクも最初は何度かぶつけた……」


 どうにか二階の二人の部屋から一階のリビングに降りて母達の前に出た瞬間。


「何よそれぇええええっ!」


 母のひとり、美里が変わり果てた娘の姿を見て叫ぶ。


「えへへー、いいでしょー」


「いいでしょー、じゃ、ないわよ。何よそれ、何なのよーっ!」


 雪枝にはブラジャーを借りる時に話をしていたが。


 美里には黙っていたし、雪枝にも黙っているように頼んでいたため。


 美里が娘の、アカネの姿を見て驚くのも無理はない。


 事情と言うか、状況を説明すると、美里は。


「雪人ちゃんっ! わたしのも作ってっ!」


「えー……」


 また斜め上の方向へと作業が。



 つづくことに。





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